医療というと崇高なイメージがありますが、これによって生計を立てているわけですからどうしても料金が発生してきます。例えばワクチンやフィラリア予防薬では原価があり、そこに診察料や技術料・処方料というものが加わり飼い主さんに請求されることになります。このように原価があるものであればあまり大きな料金の差はでませんが、処置や手術によっては使用する材料や器具その先生の腕前などによって天と地のような差が出てしまうこともあります。料金は高すぎても安すぎても問題があります。 例えば猫の卵巣・子宮全摘出術(避妊手術)だとすると、しっかりした手術室において人並みにディスポーザブルの術衣やドレープを使用し、気管チューブを挿管して吸入麻酔を行い、血管の止血にチタン性のクリップを使用し吸収糸で縫合を行うとします。手術の際に術者と助手、さらには麻酔をモニターするスタッフが1人ついたとしたら手術料金が5〜6万円位(場合によったらこれ以上)の請求が来ても仕方がないと思います。反対に手術するような環境ではない場所で麻酔は挿管を行わず注射麻酔のみ、縫合には原価の安い絹糸(絹糸が悪いわけではありません)を使用しモニターなどは行わず術者1人で行えばそれは破格で済むことでしょう。けれどもこのような状態で行っていれば麻酔事故(死亡を含めた)や感染などいつ起こっても不思議ではない状況です。どちらもちょっと極端な例ですが、前者のような病院の手術を後者の病院と同じ料金で行うことは無理だということがご理解いただけるかと思います。『同じことなのになぜ?』といった裏側にはこのような事情があるわけです。よく電話で料金だけを聞かれる方もいますが、料金だけでなくその内容がいかなるものなのかを聞いて欲しいと思います。安いからといって飛びつかず、納得いく内容と料金で手術や診察を受けてもらいたいものです。
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