人にも体質があるように、犬種によっても皮膚がベタ付く子もいればカサカサしてしまう子もいます。それらの体質にあわせてシャンプーの種類も数多く存在します。写真のパグもアトピーということで当院に来院されましたが、月に1回のジャグジー薬浴のみで現在は良好な皮膚の状態を保っています。当初は処方食や薬用シャンプー・サプリメントなどで治療を行っていたのですが思ったような改善はなく思い切って薬浴のみにしたら不思議と落ち着いてしまいました。皮膚の治療にはこれといった定番はなかなか見つけられません。この子に良かったからといって他の子で試してみるとかえって悪くしてしまうものもあります。シャンプー・フード・薬・サプリメントどれをとっても同じかと思います。使ってみて効果がみられない(あるいは悪くなった)場合は速やかに使用をやめておかかりの先生に相談してみましょう。少しでも早く突破口が見つかるように・・・。
術後の咳き込み
犬猫の手術も人の手術と同様に、気管を確保(気管チューブを挿管)して行うことが一般的かと思います。気管を確保して手術することは安全な手術を行うためには必要不可欠なものなのですが、ある程度のコシの強さを持ったビニール製(あるいはシリコン製)の管を気管内に挿入しますから、若干気管を痛めてしまうことがあります。気管チューブも気管に対して太すぎても細すぎてもいけません。ちょうど良いサイズの気管チューブを挿管することが出来れば気管を痛めることなく麻酔を掛けることが出来ます。もう一つの問題としては吸入麻酔薬による粘膜刺激の関係があるかと思います。今使用されている吸入麻酔薬はほとんどのものが粘膜刺激性が低いものですが、それに反応してしまうと咳のような症状が出ても不思議ではありません。そして最後に年齢の問題があります。年をとってくれば気管を構成している軟骨も柔軟性を失うため硬くなっています。そこに気管チューブを入れれば気管を痛めてしまう可能性は高くなります。
術後の咳き込みは以上のような原因で起きうることですが、抗生物質や鎮咳薬などを適切に使用することで症状の改善することができます。あまりにも酷く咳き込むようでしたら手術を受けた病院の先生に相談してみてくださいね。
歩けることの喜び。
ちょうど2週間前、上腕骨頭骨折の手術をした患者さんが抜糸のために来院されました。上腕骨関係の骨折は骨幹部という骨の真ん中辺りを受傷することが多いのですが、この子は上腕骨頭という成長期だからこそあり得るような部位を骨折してしまいました。骨折直後は痛みのため前足を触ることも着いて歩くことが出来ませんでしたが、今日は以前のように前足も触らせてくれ、しっかりと踏ん張ることも出来るようになりました。思ったように歩けるようになったこの子も嬉しそうですが、飼い主さんが本人(犬)以上に喜んでいてくれたのが何より嬉しい限りです。
整形外科はまず形態を元に戻すこと。そして機能回復は70〜80%を見込めれば良しと言われていますが、思っていた以上の回復に手術させてもらった私が一番嬉しかったかもしれません。犬猫にとって4本の足を使って歩けるということは、食べることの次くらいに楽しいことなのだろうと思います。違和感なく歩けるようになってホントに良かった。
今、注目している手術装置
手術の際に血管は様々な糸やクリップなどによって出血しないように止血の処置がされます。けれども臓器の種類によっては血管が多く、その1本1本の血管を処理していくことは非常に大変なことです。もちろん今までにある手術装置で止血することが出来るものもありますが、写真のこの装置は太さ7mmまでの血管を糸やクリップを使わずに止血(というよりもパック)することが出来ます。現在はデモンストレーションということでメーカーから借りているものなのですが、本日行った去勢手術では約2mmの血管において満足できる止血効果を得ることが出来ました。人の総合病院などではこの手術装置はほとんどの病院が導入しているようで、手術時間の大幅な短縮が出来ているようです。初めて使用しましたがこの手術装置は獣医が行う手術においても大いに役立ちそうです。“今年はこの装置が欲しい。いや買うべきだ。”と思ってしまいました。なんとか導入できるようにがんばろうっと。
PS.読み返してみて何が良いのかと言うことに触れていませんでした。この装置の利点は血管の止血処理に糸やクリップを使用していましたが、この装置を使うことで体内に異物を残すことなく止血処理ができるということです。糸やクリップも医療用とはいえ、出来れば体内には異物は残したくありませんからね。
早くも季節の変わり目か。
3月に入り1〜2月は何だったのだろうというくらい忙しくなりました(というか病気が増えたのかな?)。とはいえ季節とは関係ない病気も多数あったのですが、ちょっと大変だったのが猫の糖尿病でした。人ならば自覚症状や自ら通院することで病気を早期に発見することが出来ますが、犬猫の場合ではそうはいきません。ときに猫では、太った→よく食べる→元気 という流れから 最近やせてきた→食事を増やす→食べない→糖尿病が発症していたというケースをよくみます。当院で糖尿病〜糖尿病を疑わせる患者さんのほとんどが朝から晩までの仕事で、猫がいつでも食事を摂れるようにと置き餌をしている方がほとんどでした。良かれと思ってやっていたことが徒になってしまっていたのです。必ずしもそうとは限りませんが、置き餌にはあまり良いことはないようです。置き餌をされている飼い主さんは気をつけてみてくださいね。
まだまだ寒い日がありますが、先日早速ダニに刺されたという患者さんがいらっしゃいました。今年はノミ・ダニ・フィラリアなどの予防は少々早めに始めた方がいいかもしれません。
『入院』の意味
入院というと先生が一晩中付きっきりで治療してくれて安心なイメージかあるかと思います。一晩中付きっきりは無理としても、状態によっては数時間おきに見回ってくれていれば入院の意味があるかもしれません。自宅に併設されている病院ならば見回りや付き添いは自由なのですが、テナント契約の病院だったりすると、夜間人が滞在(宿泊)すること自体が契約に反してしまうことがあるため病院を空けざる終えないという話を知り合いから聞いたことがあります。けれどもどうしても入院が必要な患者さんが来た場合は、寝袋を持ってこっそり夜勤をするという先生もいらっしゃるそうです。
入院は飼い主さんが自宅で管理するのが難しい状態(手術後etc.)であったり、点滴による継続的な治療や管理が必要と判断された場合に勧められるものだと考えています。入院させたらからには責任を持って管理するのが獣医師としての使命。入院させるだけさせておいて、夜間は院内に誰も滞在(見回り)することがない病院もあるそうです。夜間どのような管理をしてくれるか確認することは、実際に入院をさせるかどうかを決める重要なポイントだと思います。必ずチェックしてみてくださいね。
嗚呼、更新が・・・。
今月は頑張って更新しようと思っていたのですが、前回の更新からだいぶさぼってしまいました。病院での話題というものはどうしても難しい病気の内容に偏ってしまいがちで、かといってあまりふざけた内容(個人的な愚痴etc.)では病院のホームページには相応しくないし・・・。最初の頃の頑張りは何処へやらといった感じです。まあ、あまり肩に力を入れずに更新できるように頑張ります。
さて真面目なお話しですが、先日お隣の群馬県からわざわざ当院まで足を運んでくださっていたバーニーズマウンテンドックの飼い主さんから、その子が亡くなったというご連絡を頂きました。当院で2回手術をさせてもらい、年齢からくる変形性脊椎症を緩和するためにレーザー治療やお薬での治療を行っていたのですが、13年間の命を全うしました。私が診察に携わったのは後半でしたが、今までよく頑張ってくれたと思います。その子は最終的には入院などすることなく自宅で飼い主さんに看取られながら亡くなったようです。命が終わりを告げることはどんな時も悲しいものですが、飼い主さんに看取ってもらえることってそのペットにはとても幸せなことだろうと思っています。ゆっくり休んでくださいね。
同じことなのになぜ?
医療というと崇高なイメージがありますが、これによって生計を立てているわけですからどうしても料金が発生してきます。例えばワクチンやフィラリア予防薬では原価があり、そこに診察料や技術料・処方料というものが加わり飼い主さんに請求されることになります。このように原価があるものであればあまり大きな料金の差はでませんが、処置や手術によっては使用する材料や器具その先生の腕前などによって天と地のような差が出てしまうこともあります。料金は高すぎても安すぎても問題があります。 [もっと読む…] about 同じことなのになぜ?
手術手洗いの概念
手術の前にはブラシで指先から肘までゴシゴシ丁寧に手洗いすることが基本とされています。おそらく現在、大学の外科実習で教えている方法も変わってはいないと思います。滅菌消毒の基本的な作法を身につけておくことは自分が開業した際に、手術での余計な感染を予防するために必要なことだと思います。もう5年前の2002年に発表された手指衛生ガイドラインというものには、今までの手術手洗いの概念を変えるような発表がされていました。それは【ラビング法】というもので、速乾性擦り込み式手指消毒剤を皮膚に擦り込んでいくというものです。もちろん手洗いの仕方にもある程度の規制がありますが、ブラシによる手洗いの欠点を解消し、それと同等あるいはそれ以上の殺菌効果を得ているというデーターも発表されています。これは人医療での話ですが、手術に際しての手洗いについては獣医療にも充分適応されることだと思います。今までの概念にとらわれず、良いと思われることはどんどん取り入れていくことはどんな医療の現場にも必要なことかもしれませんね。
サプリメント文化
人も動物の世界もサプリメントブームのようです。最近では食事代わりのようにサプリメントを飲んでいる人を見かけます。人は意識的にサプリメントを飲んでいるので、心理的にもなんか体調か良いような気がするという効果もあるのではないでしょうか。けれども何も判らずサプリメントを飲まされているペットはどうなのでしょう。もちろん飲ませていることで目に見えて効果があるものもあれば、飲ませていてもあまり代わり映えのしないものもあるでしょう。薬もそうなのですが効果が認められない場合、漫然と使用すべきではないとあります。そもそもサプリメントとは足りないものを補うためのものだと私は認識しております。しっかりとした食事を摂っていて足りないものを補うのならばいいのですが、何でもかんでもサプリメントというのはいかがなものかと思います。大切なペットに健康でいて欲しいという気持ちでサプリメントを与える気持ちはわかりますが、何よりバランスの良い食事をさせてあげることも大事だということを忘れないでください。