本日の新聞に“薬の効かない結核”の記事が掲載されていました。ここ数年、抗生物質が効かない病気(細菌)の話題が多くなったような感じがしませんか。病気になる→病院に行く→薬(抗生物質)をもらうという流れがあたりまえのようになっていますが、薬の中に必ずといってよいほど抗生物質が含まれている国は日本だけだそうです。ある製薬会社のデーターにも【世界で1番抗生物質を消費しているのは日本】というものがあるくらい、日本人は薬が大好きな国民のようです。確かに薬を処方されると安心したような気がします。けれども生き物の体には必ず治癒させる力が存在しています。そういった力を失わせつつあるのは抗生物質を必ずといってよいほど処方する現代医学のしわ寄せなのかもしれません。おそらく薬の効かない病気はペット医療の中にも増えていくことでしょう。そうならないためにも薬を処方する側の者として注意しなければならない事を考えさせられる記事でした。“とりあえず抗生物質を飲ませておけば・・・。”的なことは極力避けた方がよさそうですね。
気持ちにメリハリを
勤務医時代には次から次へと来院される患者さんをこなしていくのに夢中でした。そんな生活を送っていたので、横浜から宇都宮に戻ってきた当初はまだ患者さんも少なかったことからあまりに暇で気が狂いそうになった経験もしました。気がつけば5年、おかげさまで患者さんの数も増え、医療器械のローンを払いながら充分生活できるようになりました。確か雑誌だったと思うのですが日本人は仕事を楽しめておらず、休みの使い方も下手といった記事を目にしました。自分は仕事は楽しめているけれど、休みの取り方・楽しみ方は下手だなぁと思います。命に関わる仕事ですからあまり長期にわたって休みを取ることは難しいですが、ちょっとした休みを有効利用し気分転換できればもっとメリハリがつくのかなぁなんて思っています。さて明日はクリスマスです。今年は病院にツリーを飾ってみました。皆さん急患などないようクリスマスをお過ごしください。
獣医の満足≠飼い主の満足
飼い主さんに手術の結果に満足してもらえることは術者としてこの上ない喜びになります。特に骨折などの整形外科疾患では術後の結果によって満足度は明らかに異なってきます。我々獣医側としては、変位してしまった骨どうし位置を整え、日常生活における機能の回復を望めるような状態にすることを目的とします。しかし骨折している部位にたどり着くためには健常な部位にメスを入れることになるので術後に若干の機能の低下が見られることがあります。特に整形外科に関しては骨折する前と全く同じ状態に戻すことはできません。飼い主さんとしては少しでも元通りにという気持ちがあるかと思いますが、こういった理由で若干の機能の見劣りが起こってしまうことをご理解いただければ幸いです。また、術後のレントゲンで“骨折した部位どうしがぴったりくっついてないと大丈夫なの?”と不安に思う飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、骨折した骨はある程度の部位に戻してあげることで化骨という現象が起きてくっついてくれます。もちろん術者としてもぴったり合わせることができれば満足なのですが・・・。今年もあと少し。皆さん骨折などの怪我がないようお過ごしください。
まさおくんの死
皆さんテレビで1度くらいは目にしたことがあるかと思います“ぽちたま”のまさおくんが亡くなったという記事を本日の朝刊で目にしました。レトリーバーによくみられるというリンパ腫だったようです。まだ7歳、元気に走り回っていてもおかしくない年齢ですがタレント犬というストレスもあったのでしょうか?リンパ腫も癌治療の進歩でコントロールの取れる病気になりつつありますが、それでもタイプによっては癌が急速に拡がり命を奪われしまうものもあります。自分が今まで経験したリンパ腫もほとんどがレトリーバー系で、年齢も7〜8歳に発症しているものばかりでした。人医療のように“癌は早期発見すれば完治する病気”とは言い切れませんが、やはり早期発見し治療することができれば病気をコントロールすることができます。7歳以上のレトリーバーを飼われている飼い主さんはおかかりの病院でチェックしてもらってくださいね。
痒み止めとその効果
当院では皮膚の痒み止めとしての薬を7種類扱っています。抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬・Lシステイン製剤・ステロイド剤など皮膚の状態によって抗生物質などと組み合わせ処方しています。その中でも痒み止めとして著効を示すのはステロイド剤になりますが、使用法を誤れば皮膚病は治るどころか酷くなってしまうこともあります。皮膚病で酷い目にあった飼い主さんのほとんどがステロイド剤を諸悪の根源のような言い方をされるのですが、これはステロイド剤が悪いのではなくその使い方が悪かっただけなのです(本当に悪い薬ならばとうの昔に姿を消していてもおかしくないはず)。それでもステロイド剤を使いたくないという飼い主さんには他の薬を選択することになりますが、実際には他の薬でステロイド剤ほど満足のいく痒み止めはなかなかありません。同等の効果を得るためには薬用量を高めに処方したり、1日3回服用してもらったりとそれなりの条件が必要となりますが、それでも満足できないことだってあります。ご理解いただきたいのは非ステロイド系の痒み止めの治療はコントロールに非常に時間がかかってしまうということです。症状によりけりでしょうが少なくとも1ヶ月位はかかると思ってください。そして薬だけで治療しようとせず食事やおやつに与えているものなどを吟味し体質を改善していきましょう。痒み止めの薬はあくまで症状を隠してしまっただけなのですから。
骨折、骨折また骨折。
12月1日に伯父 野亦賢一の四十九日法要と納骨を行って来ました。住職の法話のなかで四十九日というのは故人との思い出や別れの辛い気持ちを整理するための期間であって、それ以降は通常の生活に戻るひとつの区切りとなるものだというお話しを頂きました。通常の生活・・・というかここ数日は通常の生活よりも非常に忙しい日々が続きました。ヨークシャー・テリアの指(中手骨)4本の骨折、ポメラニアンの前腕部(橈尺骨)骨折、そして他病院さんの症例でしたがダックスフンドの骨盤骨折と、手術好きな(?)私にとっては忙しかったですが充実した日々でした。おかげさまで無事に全ての症例を飼い主さんにお返しすることができたのも、伯父が見守ってくれいていたのかなぁ。12月は師走と言うだけあって何かと忙しくなりペットの事故も増えます。飼い主の皆様、くれぐれも事故の無いようお過ごしください。
犬の歯医者さん
私達獣医が一般的に犬猫の歯科で行う事というと“歯石除去”あるいは“犬歯削り”程度のものが一般的なところです。ところが今回、人の歯医者さんの協力を得ることで折れてしなった大型犬の犬歯を再生する処置(差し歯)を行いました。というかこの歯医者さんのペットなのですが、犬歯を折ってしまったことで歯髄炎を起こし痛がっていたことが今回の試みのスタートでした。まずは抜髄を行い髄空を埋め型どり、次に仮歯となる芯(コア)を装着し、最後に仕上がった本歯(差し歯)を装着し噛み合わせを見るという本格的な作業でした。合計3回の麻酔処置。そして出来上がった状態が右の写真になります。言われなければわからないくらいの出来栄えに飼い主さんも大満足。私も貴重な体験をすることができました。が、ペットの歯医者さんを本格的にやるとなるとこれまた大変なことです。
獣医のドクハラ
人医療の世界でも問題になっていることですが、獣医療の世界でも少なからず見られるようです。最近のことなのですが、獣医さんに“私の言うことが聞けないなら一切の責任は負えませんよ”と言い放たれたという患者さんが来院されました。その患者さんはもう何も言うことができなかったそうです。先生と呼ばれているといつの間にか偉くなったような錯覚に陥り、“俺が言うことは絶対間違いない。”とプライドばかり高い人間になってしまうのでしょうか?どんなに偉い先生でも間違うこともあるでしょう。ましてや責任を負うということがどんなことかを考えたらこんなことはとても言えません。“自分はこんなに頑張っているんですよ”といったアピールのつもりだったかもしれませんが、もし自分が患者の立場にたって言われたら悲しい(不快)であろう言葉は他の人にとっても同じこと。先生と呼ばれる人間だからこそ注意しなければならないことですね。私も気をつけねば・・・。
まだまだ“得意な”とは言えませんが・・・。
最近になって膝蓋骨脱臼の手術を行う機会が増えてきました。やはり人気の小型犬種であるチワワ・プードル・パピヨンなどが多く、先天的に膝関節が弱い犬種達です。私が永岡勝好先生のもとで過ごしていた3年間、毎日のように膝蓋骨脱臼の手術があり1日多いときでは4〜5件の手術を間近で見ることができました。もちろん手術を見ていたことと実際自分の手で手術を行うのとでは雲泥の差がありますが、このような状態の膝ではこうした方がいいといったアドバイスのおかげで今のところ術後の経過に問題が起きたことはありません。症例数もまだまだ胸を張れるほど多くはありませんが、1つ1つの症例をよく観察しこれからも膝の手術をこなして行きたいと思っています。そして得意な手術は“膝蓋骨脱臼の手術です”と言えるようになりたいものです。
最後の選択肢
獣医師をしていれば経験しなければならないであろう【安楽死】。できる限り避けたい選択ですが、癌などの病気で回復の見込みがない症例や、鎮痛剤を使用しても痛みがコントロール取りにくくなってきた症例においては選択せざる終えない場合もあります。辛いのは判っていても飼い主さんにとっては受け入れがたい選択ではないでしょうか?こんなEntryをしたのは先日、食欲不振と下痢の症状を訴えていた猫の安楽死処置を行ったからです。その猫の病気は猫白血病による消化管に見られるリンパ腫でした。病気のコントロールは難しいかもしれないけれど抗ガン治療をすることができることも説明したのですが、飼い主さんの選択は【安楽死】でした。“この子は短い間だったけど生命をまっとうしました。これから先苦しい思いはさせたくない。”というのが飼い主さんの思いでした。とことん最後まで治療して納得してもらうのも獣医の仕事ですが、完治が望めない病気でペットにとっても飼い主さんにとっても辛い思いを長引かせない【安楽死】を選択するのも獣医の仕事。どちらがよいのか答えを出すことは難しいと思いますが、ペットとその飼い主さんにとってBestな選択ができるように心懸けて行きたいものです。