2日前、歩き方がおかしいと言うことで来院されたサクラちゃん。今朝は食欲もなく嘔吐しているということなのでいろいろな検査を行うことにしました。血液検査では大きな異常は無かったのですが、レントゲン検査・超音波検査で下腹部に通常では確認されないはずの管腔臓器が・・・。私:“サクラはまだ卵巣と子宮はついてましたっけ?” 飼い主さん:“まだありますよ。そういえば1週間くらい前、雄犬がサクラに乗っかろうとしてました。” みなさん何となくお判りかと思います。そう“子宮蓄膿症”です。体の状態が良かったので入院・即手術、そして本日退院の運びとなりました。おそらく来院が2~3日遅れていたら血液検査では大きな異常が認められたでしょうし、即手術というわけにはいかなかったと思います。病気はいかに発見が早いかで対処方法も変わってきますし、術後の経過も変わります。日頃の飼い主さんによるペットの健康管理の必要性を痛感しました。しかし、高齢ペットの発情様症状は注意しなければなりませんね。
些細な一言
ちょっとした言葉の行き違いで大きな問題が発生することがあります。抽象的ですが“難しい病気”という言葉が“治らない病気”になりいつの間にか“癌で余命がない”になってしまったりします。診断名は同じでも他の病院で“時間はかかるけれど治るもの”と説明されたとしたら、嬉しい反面最初の診断を下した先生に対しての怒りを覚えるかもしれません。説明の仕方一つで患者さんの病気のとらえ方は変わってくると思います。患者さんにはインパクトのある言葉(病名)だけが耳に残ってしまい、いちばん理解して欲しかったことが伝わっていなかったという経験があります。1年以上も前に“言ったか言わないか”なんてことは書面に記録でもしていない限りわかりませんし、そこに感情が絡んでくれば話はこじれるばかりでしょう。診断器機がどんどん良くなっている現在、診断能力は病院によって大きな差はなくなってきていると思います。そこで診断された病気をよく噛み砕き、些細な一言で患者さんと揉めることの無いよう説明できる国語力を身につけていくこと、これからの医療の現場に必要なことですね。
まずは深呼吸を。
犬猫を飼っていて過去に経験したことが無いことに出くわしてしまうとパニックになって電話をされてくる方がいらっしゃいます。可愛いペットのことですから気持ちは判りますが、落ち着いてまず状態を確認してみましょう。電話をされてきた方にまず落ち着いてもらい、電話でいろいろ確認をしてもらっているうちに“あれっ。元気になっちゃった。”ということが結構あったものです。本当に救急を要するものかどうか見分けることは焦っているときには難しいと思いますが、まず元気があるのかないのか?痛がっているかいないか?出血があるのかないのか?など、病院側としても重傷度を判断する材料は多く挙げていただいた方が対処法をアドバイスすることができます。口がきけないペットですから飼い主さんから的確な情報を私たちに伝えていただくことが救急治療の鍵になります。それでは最後にもう一度、電話する前には落ち着いて深呼吸を。
健康体における手術でも
手術というものはできる限り体の機能が正常な時に行いたいものですが、病気や状態によってはそれらを圧してでも手術しなければならない時もあります。このような場合、事前に飼い主さんには危険を伴う手術であることを伝え、ご理解して頂いた上で手術に挑むことになります。一般に初めて手術を考える機会というと避妊・去勢ではないでしょうか?ほとんどの場合、避妊・去勢の手術といえば健康な時に行われることが多いでしょう。ここで何をもって“健康”と判断するかは先生によってそれぞれ異なりますが、一般的には問診を行い、血液検査・聴診・心電図などのデーターを総合的に分析して判断するのではないかと思います。ここで誤解されないで欲しいことは“健康=麻酔の安全が保証された”ということではないということです。 [もっと読む…] about 健康体における手術でも
病院巡り?
宇都宮で診察するようになり5年目。当院を信頼してずっと通院してくれる患者さんもいれば、何らかの原因で当院から離れていかれる患者さんもいます。ペットを診察する仕事ですが、そこには人と人同士の相性や治療に対する考え方にズレがあれば仕方がないこと。ペットにも飼い主さん自身にも合った病院を探すことは大切なことだと思います。ところが何らかの病気で最初に掛かった病院での診断結果、あるいは治療効果を待たずに病院を代えてしまう患者さんがいらっしゃいます。セカンド・オピニオンを得るにしても病名や診断結果もでていないのに次から次へと病院を渡り歩くのはどうでしょう?大切なペットのためですから少しでも早く良くなって欲しいという気持ちもわからないのではないのですが、まずはしっかりと診察〜診断〜治療を受けてみるべきです。そして診断に納得できなかったり、治療効果がなかった時こそまた違った観点から診察を受けてみるのがベストではないでしょうか?中途な状況では治るものも治りませんし・・・。
勇気ある決断
もしもあなたが飼い始めたペットが先天性疾患をもっていたらどうしますか?その中でも先天性心疾患の場合、思い描いていたペットとの生活はおろか飼い始めて数ヶ月のうちに重篤な症状に陥るものもあります。先日元気がないということで来院されたパピヨンも、診察してみると異常な心音と努力性呼吸(全身を使っての呼吸)、チアノーゼから先天性心疾患を疑わざるおえませんでした。病気の説明をしたあとの飼い主さんの落胆とぶつけようのない怒りの様子は見ているこちらも辛いものがあります。厳しい状況でしたが、この飼い主さんは命が続く限りこの子の世話をすることを決断されました。 [もっと読む…] about 勇気ある決断
サービス業ですが・・・
獣医師による診療は医療行為ですが、業種でいうとサービス業に分類されます。サービス業ですからみなさんの要望に応えられるよう努力していかねばならないのですが、時間はある程度区切りをつけていかないと診療業務に差し支えることもあります。当院ではお昼休みを12:00〜15:00という時間でとらしていただいていますが、この時間帯に往診にでたり麻酔処置や手術を行っています(何もないときは休んでいますが・・・)。この時間帯に買い物に出た序でということでお薬を取りに来られる患者さんがいらっしゃいます。事前に連絡いただければ用意しておくことも可能ですが、往診中だったり手術中だったりすると直ぐに対応することができないこともあります。動物病院は限られた時間を利用していろいろなことをしています。救急は別ですが、診療時間以外の時間を有効に使えるようご協力お願いします。
獣医は道先案内人
というのが私が常々思っている獣医師としてのスタンスです。病気になったときまずどうしたらよいか飼い主さんに選択肢を提供することができなければならないと思います。命に関わるような重大な場面は別として、獣医側からの見解が飼い主さんにとって押しつけになってはなりません。“いわれるがままにやっていたら莫大な費用がかかった。”、“指示に従っているのに状態が悪化している。”といったトラブルはやはりインフォームド・コンセントがなっていなかったことのあらわれでしょう。獣医師それぞれの経験や見解の違いで飼い主さんへの選択肢は異なってくるでしょうが、“治療法にはこのような方法があります。この方法にはこのような利点もあるがこのような欠点もありますよ。そして費用はこの位かかりますよ。”といった予測しうることは全て提示しなければならないと思います。そして納得いった上で治療を進めていくことが本筋でしょう。これからも治療に当たっていい道案内ができるよう治療法の引き出しを増やせるよう心懸けていきたいと思っています。
お盆初日にして・・・。
今まで気にかかっていたこと2つが今日解消されました。1つはチワワのお産。交配した日にちが不明だったためマメに病院に通ってもらい胎児の状態をチェックしていたのですが、昨日帝王切開にて無事4匹の赤ちゃんを取り上げることができました。体重もばらつきなく無事に成長することを祈るばかりです。もう1つは会陰ヘルニアの手術をした犬の抜糸と経過でした。手術は今回が3度目でしかもヘルニア内容に膀胱が突出してしまっていた症例でしたが、術創もきれいになり排便も排尿もいきむことなくできているようで飼い主さんと共々“ほっと”一安心です。これからも経過をよく観察していかなければなりませんがとりあえず一段落といったところです。お盆初日に何事もなく過ごせたことをご先祖様に感謝しなければいけませんね。
確かな情報を得るために
セカンド・オピニオンを得るための情報を得ることは、飼い主さんにとってはなかなか難しいことだと思います。獣医医療にはまだ専門医というものが確立していませんから、週刊誌にあるような“〜のことなら〜病院”といった特集があるわけでもありません。だた獣医学関係の雑誌にはそれぞれの分野について得意としている先生の記事などを目にすることがあり、そういった先生を紹介してもらうことができればベストなんでしょうね。私の知っている限りでは【二歩先をゆく獣医さん】光文社、【頼りになる犬+猫の先生】三推社、という本に各分野で活躍されている先生方の情報が載っています。どちらの本も獣医学関係の雑誌で目にする先生方が名を連ねているので間違いないかと思います。みなさん参考にしてみてください。