人が手術するというということになると、年齢によっても異なりますが様々な検査が行われます。これは事前に体の状態を観察するということでもありますが、万が一起こりうる事故の可能性を察知するということでもあります。それと比較すると動物に対しての手術(麻酔)に対しての認識はあまり高くないのが現実ではないでしょうか?あまり怖がらせるようなことを書いてしまうと麻酔をかけることに対して臆病になりすぎてしまう方も増えてしまいそうですが、体の仕組みは人も犬も猫もほとんど変わりがありません。それなりの検査をし適切な麻酔を選択するためには準備が必要です。?n 今でも当日おなかいっぱい朝食を食べた状態で、“今日、手術してください!”と来院される飼い主さんがいらっしゃいます。一般の方が麻酔について分からないのは当然ですが、せめて事前に電話を1本かけてもらえることを望みます。
発作を抑える薬
先天的なものあるいは脳障害などによって起きる発作のことを“てんかん”と言います。てんかん発作は、意識を失うことはありませんが自分では制御できないような振戦(ふるえ)や筋肉の硬直のため自由がきかなくなってしまいます。てんかん発作は日に何度も起こることで、脳神経や全身に何らかの併発症を起こしてしまい命を脅かすこととなります。そうしないためにもてんかん発作はお薬でその症状を抑えなければなりません。?n 代表的な薬としてフェノバール(抗痙攣薬)というものがあります。症状がひどい場合には注射によって投与することになりますが、ある程度症状が落ち着けば飲み薬として与えることとなります。けれどもこの薬は痙攣を抑えることも可能ですが平常時の動物の活動性(元気な様子)を少なからず低下させてもしまいます。けれどもてんかん発作が日に何度も続くことの方が命に関わってしまいます。もし発作持ちのペットを飼われている飼い主さん、元気がなくなってしまう様子を見るのは辛いことですが、お薬は病院の指示通りに与えてくださいね。
いかに病気を追求するか?
飼い主さんが“何か様子が変!”と言うからには必ず何か異常があるはずだと思っています。しかしながら、いかにいろいろな検査をしてもこれといった異常が発見できないこともあります。そんなとき必要になるのは、飼い主さんからの日常生活の話や最近あった出来事、例えば親戚の子が遊びに来たとか、雨だったのでいつもより散歩が少なかったとか、ほんの些細なことなのですが答えを導き出すことができるヒントが隠されていることがあるんです。?n 病気を治すものというと注射や薬がばがりが注目されがちですが、もっと大切なものは日常の食生活だったり、運動量だったり、精神状態だと思います。ストレス社会と言われる現在、毎日気ままに生きているかのように見えるペットたちも私たちが気付かないだけでストレスから病気になっているかも知れませんね!
外耳炎には要注意!
耳をかゆがっていているのに気づき、ちょっと覗いてみると“真っ黒”なんてことはよくありますよね。黒い汚れくらいでたいした炎症がなければ治療することで良くなります。けれどもこれに気づかず放置してしまうと、外耳炎から中耳炎さらには前庭疾患にまで症状が進行することがあります。また、耳道(耳の穴から鼓膜まで)の付近には顔面神経という顔の表情や瞬きを司っている神経も通っているため、耳道に炎症が起こると顔面神経麻痺を起こしてしまうこともあります。?n ちょっとした病気でも気がつかなかったり、放置してしまうことで思わぬ大きな病気にしてしまうことがあります。特に外耳炎では進行してしまった前と後では治療に掛かる日数も体力的負担も変わってきます。耳の中の変化にはよく注意してあげてください。
軟骨異栄養犬種
久しぶりに難しいタイトルです。このタイトルをみたとき、理解できた飼い主さんは非常に勉強熱心なんでしょうね。これは椎間板ヘルニアが起きやすく脊椎神経に何らかの異常が生じやすい犬種のことなんです。椎間板ばかりが取り上げられがちですが、各関節の軟骨にも同じことがいえるのです。さてこの軟骨異栄養犬種といわれている犬種とは何でしょう。代表的なものは、ダックスフンド・ビーグル・ペキニーズ・コーギーなどが挙げられます。基本的にはある程度年齢(8歳過ぎ)がいってから起きる椎間板疾患ですが、これらの犬種には年齢は関係ありません。早ければ3歳位に発症してしまうケースもあります。?n 予防することはなかなか難しいのですが、まず太らせないこと。そして成長期には適切な栄養を取らせることが大切ですね!
適度な距離を持ちましょう!
新しい家族としてペットを迎え入れると、何かと手を焼いてあげたくなってしまうのは仕方がないことだと思います。けれどもこの“度”が過ぎてしまうことで大変なことが起こってしまうのです。一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、“分離不安定症”と呼ばれるもので、常に一緒にいることでペットは特に世話をしてくれる人に対して精神的に依存する割合が高くなってきます。けれどもその人がそばにいなくなったり、自分の思うようにならないことで病気になってしまったり、ソファーやスリッパなどを破壊してみたりと、思うようにならない怒り(?)の矛先を違ったもので発散しようとします。さらには一人で留守番させられようものなら、家族の誰かが帰ってくるまで吠え続けるようなこともあるようです。これとは反対に、人には“ペットロス”というものがあり、亡くなってしなったペットのことを忘れられずに精神的に立ち直れなくなってしまう方もいます。?n お互いに思いやる気持ちは大切なことだと思います。けれどもお互いに依存しすぎることは何かあったとき大きなダメージを受けることとなります。人とペットの適度な距離感こそが楽しい時間を与えてくれるのではないでしょうか?
獣医師同士の交流
“かわいいあなたの家族のために・・・”などといっても動物病院は商売です。ご近所の動物病院の先生と仲良くできるかというと、商売仇な訳ですからそうもいかないことがあります。けれど幸いにも自分には宇都宮市内でお互いに意見交換やものの貸し借り、手術などどうしても手が足りないときに手を貸してくれる先生が3人ほどいらっしゃいます。先週の木曜日には埼玉の本庄市にある動物病院の先生のところで膝蓋骨脱臼の手術をしてきたのですが、こちらの先生も自分の知識を出し惜しみすることなく教えてくださるし、年下の私の意見も素直に取り入れてくれます。?n 自分もこれから先何年病院をやっていても、経験していないことや一人で判断するには難しいことがあるはずです。そんなとき素直にその筋に長けている先生の意見を聞くことができたり、協力を求めることができる先生がいるということは大きな財産だと思っています。このような関係をもっと広め、患者さんに還元できれば何よりなんですけど・・・。やっぱり難しいかな?
より良い病院を作るために。
現在当院では、来院された患者さんのほとんどを私が診療させていただいております。そんなに規模が大きいわけではなく、来院数もさほど多くないので何とか一人でこなすことができています。このこなすというのは、患者さんの受付から始まり→診察→検査→治療あるいは処置→薬の処方→会計という流れです。この流れでいくと多くて1日10件の患者さんをみるのが精一杯な状態です。自ら限界を決めてしまってはそれ以上の進歩は望めないのですが、患者さんから状態をよく伺い、できる限り見落としの無いように診察し、症状や病気のことをよく説明・理解してもらって帰っていただくには最低でも1時間弱は掛かってしまうからです。
少しでも診察の流れをスムーズにするべくこれから少しずつシステムを変えていかねばと思っています。それは受付のシステムであったり、診断機器であったり、スタッフであったり・・・。とりあえず、何から手をつけるべきかなぁ?
救急について思うこと
生き物ですから何が起きるかわかりません。散歩中に交通事故にあったり、何かを拾い食いしてしまったり、仲の悪い相手と喧嘩してしまったりと不慮の事故というものはいつ襲いかかるかわかりません。このような出会い頭の事故は別として、何らかの持病があり、その症状に対しての薬を飲んでいるにもかかわらず、薬を飲ませる前の状態であったり(さらにひどい場合)しても2〜3日様子をみてしまう方がいます。以前にも何度かEntryしたことがありますが、人と犬猫とでは生物学的速度(1日が4〜5日に相当)が違います。この2〜3日が命取りになることがあります。?n “先生救急なんですけど”といわれて来院される方に限って、意外と様子を見すぎて救急症例にしてしまっていることが多いんです。獣医医療はどうしても治療が後手に回ります。後手に回らないようにするためには様子を見すぎないことが大切ですよ!
猫の糖尿病
以前は結構太っていた猫が急に痩せたということで来院され、検査してみると血糖値が正常値をはるかにオーバーしていました。このまま高血糖状態が続くと危険なので血糖値をコントロールするために入院を勧めました。猫の糖尿病は診断がついた時点で50〜70%がインシュリン依存性(インシュリンを注射しなければならない状態)の糖尿病だといわれています。早速インシュリンにより血糖値のコントロールを始めたのですが、入院のストレスも関係しているのかなかなかコントロールするのが難しく退院できるまでにはもうしばらくかかりそうです。?n 猫に限らす犬にも糖尿病はあります。症状は全く人と同じであり、インシュリンを飼い主さんに1日1〜2回打ってもらわなければならないこともあります。人以上にコントロールの難しい犬猫の糖尿病、肥満傾向のペットを飼われている方は要注意ですよ!