予定日より2日ほど早くダックスの赤ちゃんが生まれました。破水してしまったのが昨晩の9時頃で子犬が出てくる気配がないようなので帝王切開となったのですが、母子ともに状態も良好で本日の朝10時に自宅へと帰られました。夜のお産でちょっと辛いのは、生まれた赤ちゃんにお乳をあげなければいけないことです。帝王切開だとお母さん犬が“産んだ”という意識がすぐにでないようでなかなか子犬の世話を始めてくれないため、母乳と交互に人工ほ乳をまめにしてあげなければならないんですね。?n お産に際して毎回思うことですが、獣医側と飼い主さん側との連携があってこそ無事にお産を終えることができると思います。もしも“お産かな”と思ったら必ず1度は病院に行き、何が起こっても良いように獣医さんとお話ししておいてくださいね。駆け込みのお産だけは困りますから・・・。
ワクチンアレルギー
犬猫のワクチンとは感染症から体を防御、あるいは症状を軽減するために使用されるものです。けれどもワクチンというものは必ずしも安全なものではありません。と、そんなことを書いてしまうと皆さんワクチンを打たなくなってしまうかも知れませんが、ワクチンを打たれた体の中では免疫力を上げようとするために様々な反応が起こっています。このときにワクチンに対して反応が敏感な子では“ワクチンアレルギー”というものが起こります。この症状は様々なのですが、顔が腫れてしまったり、食欲が無くなってしまったり、動かなくなってしまったりする場合があります。このような状態がワクチン接種後数分から丸1日続いてしまうことがあります。あまりにも症状の激しいものではアレルギーを治めるための注射を打つことになりますが、ワクチンを打った後には上記のような症状が出ることがあることも知っておいてくださいね。(もし、症状が現れてしまった場合は必ず病院で診察を受けてください)
目線をかえてみると
診察していないときは受付に座って左のような風景を見ていたり、カルテの整理や参考書を読んだりしていることがほとんどなのですが、ふと目線を上げてみると当院の裏に控える八幡山公園の葉っぱが赤や黄色に色づいていることに気づきました。一日のほとんどを室内で過ごしていると、今日は暖かいのか寒いのか、ジメジメしているのか乾燥しているのか解らないときがあります。診察中に会話の中で“今日は暖かいデスねー。”なんて飼い主さんに言われてはじめて今日が暖かいことに気がつくこともありました。?n 私たち獣医師の仕事は目先の病気を治すことばかりに気をとらわれがちですが、気候の変化を感じ取って“そろそろこんな病気が流行り出すかな?”なんてことも患者さんにお知らせできるような感性を磨かなければなりませんね。
BUNのこと
BUN(Blood Urea Nitrogen)とは日本語訳すると“血液尿素窒素”というもので、BUN値の上昇は一般的に腎臓の機能の低下を表すものですが、BUN値の低下でも腎臓の機能の低下を表しています。健康診断などでは、意識として何となく数値の高いものばかりに目がいってしまいがちですが、数値が低いところに思わぬ落とし穴があることがあります。一般的にBUN値が高くなってしまう原因としては腎臓自体の機能の低下であったり、尿路(おしっこが通過する管)の問題だったりします。反対にBUN値が低くなってしまう原因としては多飲多尿(尿素の喪失)であったり、尿崩症であったり、腎盂腎炎であったりと、これまた腎臓の機能異常で起こっています。もう一つのBUN値低下の原因としては極端なタンパク質の制限食の給餌、それと慢性的な肝機能不全があります。?n 検査の値についてわかりやすく説明しようとすると値が“高いか低いか”ということになってしまうのですが、数値が高くなかったからといって安心はできないということを覚えておいてくださいね。
歩けるようになって良かったね!
9月12日に脊椎の手術をしたダックスが久しぶりに来院されました。脊椎の手術は術後にすぐに歩き出してくれる子もいれば、なかなか自力では歩くことができずに長い経過をとる子もいます。この子もレーザーやジャグジーバスによるリハビリ、さらには自宅でのリハビリを重ねたことで、だいぶ自力で歩くことができるようになりました。すぐに結果が判る手術もあれば、このようにある程度の経過の後結果が判る手術もあります。どんな手術でも全てが良い結果をもたらすとは限りませんが、脊椎の手術は歩けるようになることで手術したことが良かったと思える手術です。?n けれどもこの結果をもたらしたのは手術したということだけではなく、飼い主さんのリハビリに費やした日々の努力の賜物だということを忘れてはなりませんね。
ケンネル・コフ
一度は耳にしたことがあるのではないかと思いますが、簡単にいうと犬の“のど風邪”みたいなのもです。原因としては、犬アデノウイルス2型、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスなどのウイルスと気管支敗血症菌やマイコプラズマなどの細菌によって引き起こされるものです。ここでウイルスがどうだの細菌がどうだのと難しい話は抜きにして、どうして感染してしまったかということが気になるところでしょう。?n 1番の原因には感染犬との接触(ペットホテル・トリミング・ドックショー・動物病院etc)があげられます。基本的には上に挙げたウイルスはワクチン接種をしていれば予防できるものです。けれどもストレス状態にさらされていたり、病気の治療中であったり、ステロイド剤を服用中であったりと体の抵抗力が低下している時にはどうしても感染してしまうケースがあります。空気が乾燥するこれからの時期、ワクチンをうって免疫力を高めることも大切ですが、少しでも元気が無さそうなときには犬がたくさん集まるところへ行くことは避けることが得策ですよ。
麻酔に対しての意識
人が手術するというということになると、年齢によっても異なりますが様々な検査が行われます。これは事前に体の状態を観察するということでもありますが、万が一起こりうる事故の可能性を察知するということでもあります。それと比較すると動物に対しての手術(麻酔)に対しての認識はあまり高くないのが現実ではないでしょうか?あまり怖がらせるようなことを書いてしまうと麻酔をかけることに対して臆病になりすぎてしまう方も増えてしまいそうですが、体の仕組みは人も犬も猫もほとんど変わりがありません。それなりの検査をし適切な麻酔を選択するためには準備が必要です。?n 今でも当日おなかいっぱい朝食を食べた状態で、“今日、手術してください!”と来院される飼い主さんがいらっしゃいます。一般の方が麻酔について分からないのは当然ですが、せめて事前に電話を1本かけてもらえることを望みます。
発作を抑える薬
先天的なものあるいは脳障害などによって起きる発作のことを“てんかん”と言います。てんかん発作は、意識を失うことはありませんが自分では制御できないような振戦(ふるえ)や筋肉の硬直のため自由がきかなくなってしまいます。てんかん発作は日に何度も起こることで、脳神経や全身に何らかの併発症を起こしてしまい命を脅かすこととなります。そうしないためにもてんかん発作はお薬でその症状を抑えなければなりません。?n 代表的な薬としてフェノバール(抗痙攣薬)というものがあります。症状がひどい場合には注射によって投与することになりますが、ある程度症状が落ち着けば飲み薬として与えることとなります。けれどもこの薬は痙攣を抑えることも可能ですが平常時の動物の活動性(元気な様子)を少なからず低下させてもしまいます。けれどもてんかん発作が日に何度も続くことの方が命に関わってしまいます。もし発作持ちのペットを飼われている飼い主さん、元気がなくなってしまう様子を見るのは辛いことですが、お薬は病院の指示通りに与えてくださいね。
いかに病気を追求するか?
飼い主さんが“何か様子が変!”と言うからには必ず何か異常があるはずだと思っています。しかしながら、いかにいろいろな検査をしてもこれといった異常が発見できないこともあります。そんなとき必要になるのは、飼い主さんからの日常生活の話や最近あった出来事、例えば親戚の子が遊びに来たとか、雨だったのでいつもより散歩が少なかったとか、ほんの些細なことなのですが答えを導き出すことができるヒントが隠されていることがあるんです。?n 病気を治すものというと注射や薬がばがりが注目されがちですが、もっと大切なものは日常の食生活だったり、運動量だったり、精神状態だと思います。ストレス社会と言われる現在、毎日気ままに生きているかのように見えるペットたちも私たちが気付かないだけでストレスから病気になっているかも知れませんね!
外耳炎には要注意!
耳をかゆがっていているのに気づき、ちょっと覗いてみると“真っ黒”なんてことはよくありますよね。黒い汚れくらいでたいした炎症がなければ治療することで良くなります。けれどもこれに気づかず放置してしまうと、外耳炎から中耳炎さらには前庭疾患にまで症状が進行することがあります。また、耳道(耳の穴から鼓膜まで)の付近には顔面神経という顔の表情や瞬きを司っている神経も通っているため、耳道に炎症が起こると顔面神経麻痺を起こしてしまうこともあります。?n ちょっとした病気でも気がつかなかったり、放置してしまうことで思わぬ大きな病気にしてしまうことがあります。特に外耳炎では進行してしまった前と後では治療に掛かる日数も体力的負担も変わってきます。耳の中の変化にはよく注意してあげてください。