今までのEntryのなかで、多くのコメントを頂いている前庭疾患のことをもう少し詳しくお話ししてみようかと思います。前庭疾患の中には中枢性のもの(脳の問題)と末梢性のもの(三半規管の問題)の2つに分類されるのですが、一般的にみられるものは末梢性の前庭疾患がほとんどで中耳炎や内耳炎あるいは老化が大きく病気に関わっています。飼い主さんが気になるところは“症状がどの位の期間で改善してくるか?”といったところでしょう。年齢や原因によって異なってきますが、嘔吐・食欲不振・斜頸による運動失調は1〜2週間かけて徐々に改善してきます。治療にはとにかく安静が必要です!(当院では吐き止めを点滴しながら安静を保てるように入院治療をさせていただいています)常に目が回っている様な状態ですから、無理に動かす様なことはしない方がよいでしょう。
【まめ知識】中枢性か末梢性かを見分けるのは目の振れ方を見てください。水平だったら末梢性、水平から垂直、さらには回転性だったら中枢性です。中枢性だと治療はなかなか難しいです。
甲状腺の病気
ヒトと同じで犬猫にも甲状腺の病気があります。甲状腺の病気といっても機能の亢進症と低下症があるのですが、低下症の方が比較的観察されやすい状態でしょう。特に犬の場合では甲状腺機能低下症がみられやすい犬種があります。病気というと年齢の関係で起こるのが一般的ですが甲状腺に関しては若くして発症してしまうこともあります。飼い主さんが気づく一般的な症状としては、元気がないとか、運動したがらないとか、抜け替わりのシーズンでもないのに被毛が異常に抜けるなどの症状で来院されるケースがほとんどのようです。
これらの症状がみられ甲状腺機能低下症かどうか調べるには動物病院で採血してもらい、チロキシンと遊離チロキシンを測定してもらうことで診断が可能です。甲状腺機能低下症は飲み薬によって治療することも可能です。心当たりがある飼い主さんは早めに近所の動物病院に相談されるとよいでしょう。
伝染する心配は・・・
寒くなりヒトがカゼをひき始める頃になると犬猫もカゼをひくようになります。来院されたとき“ヒトのカゼがうつったのでしょうか?”と心配顔でたずねてくる飼い主さんがいらっしゃるのですが、ヒトのカゼウイルスが犬猫に感染することも犬猫のカゼウイルスがヒトにうつることもありません。ウイルスの詳しいことを説明するとこのEntry内では収まりきらなくなくなってしまうので、簡単に説明させていただくとウイルスには動物種特異性といって特定の動物の体内でないと生活できない性質があるようです。
これはもちろん猫のエイズウイルスにも当てはまることですのでご心配なく!
迷子のお知らせ
本日の12時頃、宇都宮市川田町の植木鋼材付近で左の写真のワンちゃんが当院の患者さんによって保護されました。女の子で、体重は10?、足先は靴下をはいたように白く、赤い首輪をつけていました。非常に性格がよく人なつっこいようです。現在は保護してくれた患者さん宅にて、飼い主さんからの連絡を待っています。心当たりのある方は是非当院までご連絡ください。(保護されたときすでに左前足首を捻挫していたようですが、当院にて治療させていただきました。)
動物との共存
本日の地元紙である下野新聞に“動物園のライオンに生きたウサギを与えていることに対しての抗議のつもりなのか、ライオンのオリの中にウサギのぬいぐるみを投げ込んだ”と言う記事が載っていました。ライオンはそれを食べてしまったとのことなのだが、ぬいぐるみは異物である。犬猫だったら腸閉塞を起こし生死に関わる事態である。もともと野生の動物を動物園と言った特殊な環境で飼育していくにあたっては生きた餌も必要であろう。ウサギの側だけにたつた視点では動物愛護精神に反するがぬいぐるみを食べてしまったライオンの側に立ったらばどうであろう?
“動物愛護”と言う言葉もその立場の違いでは???と言うこともあるでしょう。両方の立場に立って考えてみれば、ぬいぐるみを投げ込むといった軽はずみな行動はとらなかったのではないでしょうか?皆さんも動物と共存していくにあたって“動物愛護”についてもう一度考えてみてはいかかでしょう。
冷え込んでます!
急に冬型の天気になり、朝晩非常に冷え込んでます。ヒトは寒ければ洋服を着込んだり、暖房をかけたりと寒さ対策をすることができます。けれども犬猫では暖かいところに逃げ込むことができればよいのですが、そうできない場合は調子を崩してしまうでしょう。
犬猫の診断で“これはカゼです”と言いきってしまうことはできませんが、ヒトでインフルエンザが流行する頃には犬猫でもカゼのような症状をみることがあります。もちろんヒトのインフルエンザが犬猫にうつることはありませんが、食欲が落ちたり・嘔吐したり・くしゃみをしたり・発熱したり、とヒトの風邪の症状に非常に似ています。ここのところの寒さで調子を崩してしまった犬猫(特に嘔吐の症状で)が来院しています。皆さんご注意くださいね!
申し訳ありません
今日はEntry をお休みさせて頂きます。
痴ほう症
10歳以上生きるのが当たり前の最近のペット寿命、以前はさほど気にされなかった症状である“痴ほう症”は今ペットを飼っている方もこれからペットを飼われようとしている方にも経験する可能性があるでしょう。ヒトではアルツハイマーを治療するための薬が開発されているようですが、犬猫ではまだまだ先の話になりそうです。
さて犬に見られる“痴ほう症”の主たる症状なのですが、?夜中に意味もなく鳴き、鳴きやむことがない ?歩行は前進のみで、時に円を描くように歩く ?狭いところに入りたがり、後戻りできずに鳴き始める ?飼い主のことや自分の名前もわからなくなり、周囲のことに無反応 ?快食・快便であるが痩せてきて、日中寝ていることが多い などの症状が見られるようだと“痴ほう症”を疑った方がよいでしょう。
ここも注意です!
写真は大型犬種の肘(骨関節炎)のレントゲン写真です。大型犬というと股関節形成不全に目がいきがちなのですが、先天的な骨格に見られる病気として肩関節に並んで肘関節も非常に見落とせないポイントなのです。股関節形成不全では“モンローウォーク”と呼ばれる特徴的な歩様(しきりに腰を振る様な歩き方)をするため比較的飼い主さんも気づきやすいのですが、前肢の場合はただびっこを引いていることはわかりますが肩なのか肘なのかは見分けをつけることは難しいでしょう。前肢にしても後肢にしても、やはり注意したいのは太りすぎです。ちょっと太り気味の大型犬種を飼われている方は病院でcheckしてもらうと良いですよ!
獣医が直すのは・・・
私たち獣医が直すのは、当たり前のことですが動物が煩っている病気です。けれども表面上の病気を治すことができても“どうしてこの病気になってしまったのか”という原因をしっかりつかんでいないと病気を繰り返すことがあります。その上で飼い主さんに病気をご理解いただいて検査・治療に協力を頂かないと快方へ向かう道のりは険しいものとなります。
獣医医療にもインフォームド・コンセントというものが非常に重要になってきています。ただ病気が治ってもやたらお金がかかって、病気の原因もどんな治療したのかもわからないような医療というのもどうでしょう?もちろん病気が治ったにしても皆さんはこのような治療を望まれますか?獣医は病気も直すが、飼い主さんへのケアーも忘れないといった姿勢が必要ですよね!!