病気はしないに越したことはありませんが、先天的に持って生まれてしまったり、犬種特有の病気が出てしまうことがあります。外科的なもので手術をすれば治るものばかりではありません。何らかのお薬を飲み、ある程度の周期で診察を受けなくてはいけないものもあります。最近お問い合わせが多い【気管虚脱】も発症してしまうとお薬や病院とお付き合いをしなければならない病気のひとつです。【気管虚脱】の発生原因は明らかにはなっていませんが、気管を構成している軟骨の糖タンパクやプロテオグリカンが減少してその形状を維持できなくなった為、気管が虚脱(潰れて)しまうようです。診断方法はレントゲンで吸気時と呼気時の撮影を行い気管を比較する方法と、気管支鏡(内視鏡)にて気管を観察する方法が確定診断には有効です。さて飼い主の皆さんが一番気になる治療法〜予後判定ですが、【気管虚脱】という病気は完治ではなく症状の緩和を目的とした治療になることをご理解ください。気管支拡張剤や鎮咳薬、コルチコステロイドによる内科治療も症状を緩和することはできますが、虚脱してしまった気管自体を修復するものではありません。外科手術によって治療する方法も100%ではなく、術後に何らかのケアーが必要となる場合もあります。犬猫は治療さえすれば何でも治ると思われている方もいらっしゃるのですが、【気管虚脱】のように治しきることができない病気もあります。けれども病気と上手につきあうことで快適な日常生活を送ることはできます。動物医療にもこのような病気があることを知っていただければ幸いです。
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ブルセラ症
何となく変な病名ですが、これは人畜共通伝染病といって動物から人に感染する注意しなければならない病気なんです。2〜3日前、インターネットの記事で目にしたのでどんな病気なのか、何を注意したらよいのか書いてみたいと思います。原因はBrucella canisという細菌で、犬の精巣や前立腺・子宮・膣を好んで感染します。ですから病気が判らず交配してしまうことで病気がどんどん広まってしまうわけです。一般的な症状は突発性流産〜死産・不妊症・精巣炎・精巣上体炎・椎間板脊椎炎や敗血症などがみられます。これが人に感染したときの症状は、間欠的な発熱と倦怠感がみられるようです。もしブルセラ症が疑われたら、排泄された死産胎児や分娩排泄物など直接手で触れないことが大切。また疑わしきものは直ちに動物病院にて血清学的な検査を受け診断を受けることをお勧めします。ブルセラ症は抗生物質の長期投与で治療することはできますが、完全に原因菌を除去することは難しいようで、不妊手術をすることが病気を広げない一番の方法のようです。多頭飼育されている方は良く注意されたほうがいい病気のひとつですね。
目から鱗が落ちた話
よくお昼の情報番組などで、塩分をとりすぎると“血圧が上がるからよくない”とか“腎臓に悪くする”といった話題の話をしています。獣医の世界でも何となくこの話がそのまま犬猫に適用され、“塩分を摂っていたから腎臓が悪くなった”と言われるようなことがあります。ところが最近目にした獣医学雑誌に【犬猫は塩分感受性ではない】という話が載っていました。これは国際腎臓関連学会に所属しているDr.の話なのですが、正常な犬猫は塩分感受性ではなく初期から中期の慢性腎疾患の犬猫とも塩分感受性ではなく、血圧を上昇させることもないということでした。他にも腎疾患のことについていろいろ書いてありましたが、獣医師の間にも裏付けもないのにまことしやかに話されている神話のようなものがあります。医学の進歩と共にこのような神話がどんどん解き明かされていくことって素晴らしいですね。
新年のごあいさつ
2007年、明けましておめでとうございます。今年も飼い主の皆さんのニーズに応えられるよう、様々な情報を取り入れフィードバックできるよう頑張っていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。尚、新年は4日までお休みを頂いております。5日より通常通り診察をさせていただきます。
今年もあと少し
今年も残すところ今日を入れて2日となりました。12月の半ばまでに手術を行った患者さんの抜糸も昨日で済み、静かな年の瀬を迎えられそうです。今年も振り返ってみるといろいろなことがありました。病院として大きな買い物でもあり念願でもあったコンピューター処理できるレントゲン器機と新たな無影灯の導入により、やっと自分が思い描いていた病院設備に近づけることができました。設備も整い頑張っていた今年の後半、当院前院長でもある伯父の死は宇都宮に戻ってきて5年目の私にとって非常に残念な出来事でした。
公私ともにいろいろあった1年でしたが、病院として大きな事故や患者さんとのトラブルもなく過ごすことができたことが何より有り難いことです。患者さんが増えてくるとどうしても限られた時間内でコミュニケーションをとっていかなくてはなりません。コミュニケーション不足は飼い主さんの不安を招きトラブルへと発展してしまいます。そうならないよう来年も1件1件の患者さんとコミュニケーションをとっていけるような、そんなに忙しくならない病院を目指して頑張りたいと思います。皆さん怪我や事故の無いよう年末年始をお過ごしください。
薬が効かない・・・。
本日の新聞に“薬の効かない結核”の記事が掲載されていました。ここ数年、抗生物質が効かない病気(細菌)の話題が多くなったような感じがしませんか。病気になる→病院に行く→薬(抗生物質)をもらうという流れがあたりまえのようになっていますが、薬の中に必ずといってよいほど抗生物質が含まれている国は日本だけだそうです。ある製薬会社のデーターにも【世界で1番抗生物質を消費しているのは日本】というものがあるくらい、日本人は薬が大好きな国民のようです。確かに薬を処方されると安心したような気がします。けれども生き物の体には必ず治癒させる力が存在しています。そういった力を失わせつつあるのは抗生物質を必ずといってよいほど処方する現代医学のしわ寄せなのかもしれません。おそらく薬の効かない病気はペット医療の中にも増えていくことでしょう。そうならないためにも薬を処方する側の者として注意しなければならない事を考えさせられる記事でした。“とりあえず抗生物質を飲ませておけば・・・。”的なことは極力避けた方がよさそうですね。
気持ちにメリハリを
勤務医時代には次から次へと来院される患者さんをこなしていくのに夢中でした。そんな生活を送っていたので、横浜から宇都宮に戻ってきた当初はまだ患者さんも少なかったことからあまりに暇で気が狂いそうになった経験もしました。気がつけば5年、おかげさまで患者さんの数も増え、医療器械のローンを払いながら充分生活できるようになりました。確か雑誌だったと思うのですが日本人は仕事を楽しめておらず、休みの使い方も下手といった記事を目にしました。自分は仕事は楽しめているけれど、休みの取り方・楽しみ方は下手だなぁと思います。命に関わる仕事ですからあまり長期にわたって休みを取ることは難しいですが、ちょっとした休みを有効利用し気分転換できればもっとメリハリがつくのかなぁなんて思っています。さて明日はクリスマスです。今年は病院にツリーを飾ってみました。皆さん急患などないようクリスマスをお過ごしください。
獣医の満足≠飼い主の満足
飼い主さんに手術の結果に満足してもらえることは術者としてこの上ない喜びになります。特に骨折などの整形外科疾患では術後の結果によって満足度は明らかに異なってきます。我々獣医側としては、変位してしまった骨どうし位置を整え、日常生活における機能の回復を望めるような状態にすることを目的とします。しかし骨折している部位にたどり着くためには健常な部位にメスを入れることになるので術後に若干の機能の低下が見られることがあります。特に整形外科に関しては骨折する前と全く同じ状態に戻すことはできません。飼い主さんとしては少しでも元通りにという気持ちがあるかと思いますが、こういった理由で若干の機能の見劣りが起こってしまうことをご理解いただければ幸いです。また、術後のレントゲンで“骨折した部位どうしがぴったりくっついてないと大丈夫なの?”と不安に思う飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、骨折した骨はある程度の部位に戻してあげることで化骨という現象が起きてくっついてくれます。もちろん術者としてもぴったり合わせることができれば満足なのですが・・・。今年もあと少し。皆さん骨折などの怪我がないようお過ごしください。
まさおくんの死
皆さんテレビで1度くらいは目にしたことがあるかと思います“ぽちたま”のまさおくんが亡くなったという記事を本日の朝刊で目にしました。レトリーバーによくみられるというリンパ腫だったようです。まだ7歳、元気に走り回っていてもおかしくない年齢ですがタレント犬というストレスもあったのでしょうか?リンパ腫も癌治療の進歩でコントロールの取れる病気になりつつありますが、それでもタイプによっては癌が急速に拡がり命を奪われしまうものもあります。自分が今まで経験したリンパ腫もほとんどがレトリーバー系で、年齢も7〜8歳に発症しているものばかりでした。人医療のように“癌は早期発見すれば完治する病気”とは言い切れませんが、やはり早期発見し治療することができれば病気をコントロールすることができます。7歳以上のレトリーバーを飼われている飼い主さんはおかかりの病院でチェックしてもらってくださいね。
痒み止めとその効果
当院では皮膚の痒み止めとしての薬を7種類扱っています。抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬・Lシステイン製剤・ステロイド剤など皮膚の状態によって抗生物質などと組み合わせ処方しています。その中でも痒み止めとして著効を示すのはステロイド剤になりますが、使用法を誤れば皮膚病は治るどころか酷くなってしまうこともあります。皮膚病で酷い目にあった飼い主さんのほとんどがステロイド剤を諸悪の根源のような言い方をされるのですが、これはステロイド剤が悪いのではなくその使い方が悪かっただけなのです(本当に悪い薬ならばとうの昔に姿を消していてもおかしくないはず)。それでもステロイド剤を使いたくないという飼い主さんには他の薬を選択することになりますが、実際には他の薬でステロイド剤ほど満足のいく痒み止めはなかなかありません。同等の効果を得るためには薬用量を高めに処方したり、1日3回服用してもらったりとそれなりの条件が必要となりますが、それでも満足できないことだってあります。ご理解いただきたいのは非ステロイド系の痒み止めの治療はコントロールに非常に時間がかかってしまうということです。症状によりけりでしょうが少なくとも1ヶ月位はかかると思ってください。そして薬だけで治療しようとせず食事やおやつに与えているものなどを吟味し体質を改善していきましょう。痒み止めの薬はあくまで症状を隠してしまっただけなのですから。