新聞でも今年としての最高気温や熱中症(熱射病)の記事を目にするようになりました。今までも何度かこの話題に触れてきましたが、どうして熱中症(熱射病)が命を脅かすほど恐ろしいものなのかを説明させてもらおうと思います。体温は視床下部というところで設定・調節されているのですが、身体が生理的に体熱を冷却することのできる能力をを越えた高熱に曝されることで、身体を構成している細胞のタンパク質および酵素・細胞膜の熱変性によって組織の壊死が生じることになります。これが進行すると多臓器不全という状態に陥ります。具体的な臓器の症状としては、脳浮腫・循環血液量の減少および心筋壊死・胃腸粘膜壊死・腎不全・播種性血管内凝固などどれも命を脅かす恐ろしい症状です。これらの多臓器不全を生じさせる危険な体温は43℃、その高温状態にどれだけの時間曝されていたかによって救命率や後遺症の有無が決まってきます。ということは発見してからいかに体温を下げながら病院に駆け込むことができるかも重要になってきます。熱中症は屋外だけでなく屋内でも起こりうるものです。日頃の温度および湿度の管理、そして充分な水分を摂ることができるような環境作りを心懸けてください。
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湿度と皮膚病
犬猫を飼っていると、必ずといってよいほど経験する皮膚病といえば膿皮症ではないかと思います。特に梅雨のじめじめした時期は皮膚のバリアー機構が破壊されやすく、皮膚に存在する正常な細菌叢が変化することで症状を引き起こします。甲状腺機能低下症・アレルギー(ノミ、アトピー、食物性、接触性etc.)・皮膚の脂漏症などの基礎疾患をもっている場合は、健康なものと比べるとその発症率は高くなると思われます(場合によってはトリミングがきっかけになることもあります)。原因菌はStaphylococcus intermediusというブドウ球菌の一種の感染が発端で、症状の進行とともに様々な細菌が増殖し皮膚の状態を悪化させていくようです。症状は軽いもの(表在性)から皮膚の深部にわたる重度なもの(深在性)まで様々ですが、消毒と適切な抗生物質の投与で速やかに改善していきます。湿度が多いこんな時期、食べ物では食中毒、ペットでは膿皮症に注意ですね。
食べさせても平気?
ペットの食事で市販のフードを与えている飼い主さんでも“これって食べさせても平気なのかなぁ?”と思う食材があるかと思います。私もつい最近までは与えない方がいいと思っていたものが、量によっては健康を維持するために役立っているというものがあったので、ご存じの方も多いかと思いますが紹介したいと思います。まずはニンニク。ニンニクはネギ科の植物で与えてはいけないと思われている方も多いかと思いますが、免疫力を強化し虫除け(ダニやノミ)効果があるようです。続いてショウガ。ネギ科の植物ではありませんが臭いや刺激が強いため与えるのを躊躇していた方もいらっしゃったかと思いますが、抗炎症・抗酸化・強肝作用があるようです。最後にゴマ。ゴマもまた抗酸化作用が強く、さらには抗ガン作用もあるということです。5kg位のペットでニンニクなら半かけ、ショウガなら小指の先程度の大きさなら問題ないようです。とはいえ体に合うあわないがあるでしょうから、与える際は下痢や嘔吐などの症状がでないか注意して与えてみてくださいね。
捨て犬猫、半減作戦
本日の読売新聞の記事の見出しですが、環境省が2017年度までに捨て犬や猫を半減させるべく【動物愛護管理基本指針】に取り組むようです。この記事で驚いたのが、これだけペットブームといわれている現在でも捨てられたり迷子になるなどして保険所に引き取られた犬は18万2000匹・猫は23万9000匹。そしてこの9割以上が殺処分されているということです。捨てられたペットの問題は今までも様々なメディアが取り上げてますが、それでもいっこうに減らないのはどこかに問題があるのでしょう。行政ができること・販売業者ができること・動物病院ができること・そしてそれぞれの飼い主(あるいはこれからペットを飼おうとしている方)ができること、全てがかみあわないことにはこの問題を解決することは難しそうです。みなさん力を合わせて『半減』ではなく『ゼロ』を目指していきましょう。
骨盤骨折
交通事故で受けるダメージといういうのは非常に大きく、本日抜糸のため来院したアメリカンショートヘアーも交通事故により骨盤を骨折するという重傷で当院に来院されました。骨盤は体幹と後肢をつなぐ重要な骨格であると同時にその骨格内に直腸と膀胱を収め日常生活における排泄を維持しています。写真のとおりこの猫の骨盤はつぶされ、このままでは将来的に排便・排尿に障害がでることは間違いありません。状態が安定したところで、早々に手術を行いました。 [もっと読む…] about 骨盤骨折
内科症例か?外科症例か?
ダックスの人気とともに最近よく目にするようになった“脊椎疾患”。しかしこの病気はダックスに限らず他の犬種にも起こりうることで、写真のウェルシュコーギーも3ヶ月前に当院に腰抜け状態で来院されました。椎間板ヘルニアを疑い直ぐに脊髄造影、手術すべきであれば即手術できるよう準備を整えておいたのですが、造影した結果脊髄神経を圧迫しているヘルニア部位は映し出されませんでした。飼い主さんに来院していただき造影結果を説明、確定診断を受けるべく大学病院にてMRIを撮影することをお勧めしました。 [もっと読む…] about 内科症例か?外科症例か?
これに決めました。
今年2月からいろいろなメーカーの無影灯のカタログや実物を見てきたのですが、これはと思えるものに出会えました。大阪の岩城器材という会社が取り扱っているBERCHTOLD社のCHROMOPHAREというものです。一度購入すれば十数年は使用するであろう無影灯ですから念入りに調べていたのですが、デザインや使用感さらには予算の関係のなかで調べた限りでは一番良かったと思っています。今までの無影灯の明るさに慣れていたせいか、新しい無影灯は明るすぎるくらいで少し照度を下げて使用しています。これからはこの無影灯で良い手術ができるよう自己研鑽しなければと思っております。追伸:無影灯を買い換えようかと思われている先生方、一度デモしてみる価値はありますよ。
いたみの評価
しこりの大きさをモノの大きさに例えて表現することは簡単ですが、動物の痛みを何かに例えて表現することはなかなか難しいことです。それは獣医師と獣医師、あるいは獣医師と飼い主との間でもそれぞれの主観やその動物の性格によって異なってしまいまうからです。ちょっと前の話なのですが“動物のいたみ研究会”というところでいたみの評価基準(急性のもの)についてのパイロット版が発表されていました。実際に使用するにはまだ時間がかかるとのことですが、1つの基準ができ表現しやすくなることはいいことではないでしょうか。
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4本の足で歩くこと
先月22日に膝蓋骨脱臼を治すための手術をしたチワワのプルちゃんが検診のために来院してくれました。手術前は左後肢(写真右前)を挙上していたのですが、術後2週間で抜糸しその1週間後にはぎこちなさは残るものの4本の足で歩くことができるようになりました。何かを患っている時の動物の顔はどことなくいじけているような顔をしているのですが、今回来院した時のプルちゃんの顔は非常に楽しそうな表情をしているのは気のせいではなかったように思えます。関節外科において手術が3〜4割、残りは術後のリハビリを含んだケアーが重要であることを永岡勝好先生はいつも言っていました。今のところ術後の経過は良いようなのでリハビリも順調に進めることができそうです。犬猫にとって4本の足で歩けるということは、なによりも楽しいことであることを実感しました。
集団免疫を期待するためには
先日狂犬病予防ワクチンのことで触れた集団免疫ですが、これを期待するためにはどの位のワクチン接種率が必要かというと70%以上というデータを目にしました。日本での狂犬病予防ワクチンの接種率は50%にも満たないようです。こんな状態のところに狂犬病をもった何らかの動物が迷い込んだらとんでもないことになるでしょう。同様に飼い主さん任意で行われる8種(5種)ワクチンの接種率についても同じ程度でしょう。“海外ではワクチンは3年に1回しか接種しないからうちの犬猫もそうする。”といった飼い主さんもいらっしゃいますが、動物医療先進国のアメリカではワクチンの接種率が75%を超えているといわれています。このような状態ならば集団免疫を期待できるため3年に1回のワクチン接種で免疫状態を維持することができますが、これをそのまま日本に置き換えることができるかといったら現段階では無理でしょう。他力本願な集団免疫を期待する前に、まずは確実にワクチン接種率を上げていくことが大切なのではないでしょうか。