“体のほとんどは水分からできている”何かの宣伝のキャッチコピーのようですが、その水分でもある血液の量は果たしてどの位かご存じでしょうか?犬では1?あたり約80?、猫では1?あたり約70?といわれています。これは体重の1/12〜1/13の量となります。気になるのは手術や怪我などによってどの位の血液が体内から喪失した場合、命に関わってくるかということではないでしょうか?例えば体重が20?の犬の場合、1600?が血液の総量だとするとその半分である800?を喪失すると生命を脅かす状態となります。(肥満犬ではこの数字はあてはまらないでしょう!)?n 手術前に血液検査をするのは、肝臓や腎臓の機能が正常かどうかを確かめる意味もありますが、現時点での血液量がどのくらいのものかということを確かめるものでもあるんです。
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脂肪の役割
日頃、肥満=脂肪という具合に悪者にされがちな脂肪ですが、体内では脂溶性ビタミンの吸収を良くしたり、食べ物の嗜好性を高めたり、必須脂肪酸の供給源としてなくてはならないものなのです。特に必須脂肪酸は細胞を構成する成分として欠かすことのできないものであり、不足してしまうと成長不良や運動機能の低下、繁殖機能の低下さらには被毛の状態を悪化させたりふけ症の原因になります。?n 無闇なダイエットで脂肪を制限してしまうことで体内の代謝を変化させてしまいます。どんな脂肪(油)にどれだけ必須脂肪酸が含まれているかといったところまで気を遣わないとダイエットが思わぬ病気を引き起こしてしまうことがあります。人のダイエットも犬猫のダイエットも正しい知識が必要ですね!
降ろしますか?それとも・・・
睾丸(精巣)が生後2が月の段階で陰嚢(精巣2つが収まっている袋)に降りていない場合、これを陰睾といいます。睾丸は熱に弱い臓器のため陰嚢に収まり極端な熱の上昇からその組織を守っているわけですが、陰嚢内に降りきることができずに腹腔内(お腹の中)あるいは鼠径部(太ももの付け根)にあると、萎縮してしまう場合もありますが腫瘍のように大きくなってしまうこともあります。?n 今日はチワワの手術をしたのですが、飼い主さんが去勢を希望されたので去勢手術となりました。どこまで精巣が降りてきているかによって手術の難易度が変わりますが、写真のように鼠径部(鉗子で示している所に精巣が隠れています)にまで降りてきていれば陰嚢内に収めてあげることはそんなに難しいことではありません。雄犬で精巣が1つしかない場合は早めに診察を受けましょう。そしてなるべく早めにどちらかの手術をすることをお勧めします。(※陰睾は子犬に遺伝しますので交配はしないでくださいね。)
人気の裏では・・・
やはりダックスは人気があります。ペットショップを覗いてみても、ダックスのショーケースの前には必ずといって良いほど興味深そうに眺めている方がいらっしゃいます。かれこれダックスの人気もここ5年くらいは続いているでしょうか?一般的にいろいろな病気が確認され始めるのは7〜8歳を過ぎてからが一般的なのですが、ダックスについては5歳ぐらいの年齢は運動量も活発なせいか腰を痛めてしまう子が多いように思われます。半導体レーザーなどによる理学療法で回復する子もいれば、外科的にヘルニア部を処理してあげないと回復できない子もいます。?n 実は、明日も腰を痛めてしまったダックスのヘルニアの手術が控えています。この子もやはり5歳で、症状は突然現れました。手術をして1日でも早く歩けるようにがんばろうね!(手術の際には写真のように背中の毛をバリカンでカットしてしまいます。)
また、ご縁ができました!
2ヶ月ほど前に心臓病で愛犬のシーズーを亡くした老夫婦がいらっしゃったのですが、その時はだいぶ落胆されており私も“もう犬は飼わないのだろうな”と思っていました。そのことも忘れかけていた今日の午前中、その老夫婦が新たにワンちゃんを連れて来院されました。嬉しそうに抱きかかえたその腕の中には小さなシーズー犬がしがみついていました。?n 1度大切なペットを亡くされてしまうと、次はペットを飼わない方や、前のペットのことを思い出してしまうので病院を代える方もいる中、“また先生のお世話になるよ!”といって来てもらえることは非常に嬉しい限りです。こういう気持ちはいつまでも忘れてはなりませんね!
夜のお産はちょっと辛い!
予定日より2日ほど早くダックスの赤ちゃんが生まれました。破水してしまったのが昨晩の9時頃で子犬が出てくる気配がないようなので帝王切開となったのですが、母子ともに状態も良好で本日の朝10時に自宅へと帰られました。夜のお産でちょっと辛いのは、生まれた赤ちゃんにお乳をあげなければいけないことです。帝王切開だとお母さん犬が“産んだ”という意識がすぐにでないようでなかなか子犬の世話を始めてくれないため、母乳と交互に人工ほ乳をまめにしてあげなければならないんですね。?n お産に際して毎回思うことですが、獣医側と飼い主さん側との連携があってこそ無事にお産を終えることができると思います。もしも“お産かな”と思ったら必ず1度は病院に行き、何が起こっても良いように獣医さんとお話ししておいてくださいね。駆け込みのお産だけは困りますから・・・。
ワクチンアレルギー
犬猫のワクチンとは感染症から体を防御、あるいは症状を軽減するために使用されるものです。けれどもワクチンというものは必ずしも安全なものではありません。と、そんなことを書いてしまうと皆さんワクチンを打たなくなってしまうかも知れませんが、ワクチンを打たれた体の中では免疫力を上げようとするために様々な反応が起こっています。このときにワクチンに対して反応が敏感な子では“ワクチンアレルギー”というものが起こります。この症状は様々なのですが、顔が腫れてしまったり、食欲が無くなってしまったり、動かなくなってしまったりする場合があります。このような状態がワクチン接種後数分から丸1日続いてしまうことがあります。あまりにも症状の激しいものではアレルギーを治めるための注射を打つことになりますが、ワクチンを打った後には上記のような症状が出ることがあることも知っておいてくださいね。(もし、症状が現れてしまった場合は必ず病院で診察を受けてください)
目線をかえてみると
診察していないときは受付に座って左のような風景を見ていたり、カルテの整理や参考書を読んだりしていることがほとんどなのですが、ふと目線を上げてみると当院の裏に控える八幡山公園の葉っぱが赤や黄色に色づいていることに気づきました。一日のほとんどを室内で過ごしていると、今日は暖かいのか寒いのか、ジメジメしているのか乾燥しているのか解らないときがあります。診察中に会話の中で“今日は暖かいデスねー。”なんて飼い主さんに言われてはじめて今日が暖かいことに気がつくこともありました。?n 私たち獣医師の仕事は目先の病気を治すことばかりに気をとらわれがちですが、気候の変化を感じ取って“そろそろこんな病気が流行り出すかな?”なんてことも患者さんにお知らせできるような感性を磨かなければなりませんね。
BUNのこと
BUN(Blood Urea Nitrogen)とは日本語訳すると“血液尿素窒素”というもので、BUN値の上昇は一般的に腎臓の機能の低下を表すものですが、BUN値の低下でも腎臓の機能の低下を表しています。健康診断などでは、意識として何となく数値の高いものばかりに目がいってしまいがちですが、数値が低いところに思わぬ落とし穴があることがあります。一般的にBUN値が高くなってしまう原因としては腎臓自体の機能の低下であったり、尿路(おしっこが通過する管)の問題だったりします。反対にBUN値が低くなってしまう原因としては多飲多尿(尿素の喪失)であったり、尿崩症であったり、腎盂腎炎であったりと、これまた腎臓の機能異常で起こっています。もう一つのBUN値低下の原因としては極端なタンパク質の制限食の給餌、それと慢性的な肝機能不全があります。?n 検査の値についてわかりやすく説明しようとすると値が“高いか低いか”ということになってしまうのですが、数値が高くなかったからといって安心はできないということを覚えておいてくださいね。
歩けるようになって良かったね!
9月12日に脊椎の手術をしたダックスが久しぶりに来院されました。脊椎の手術は術後にすぐに歩き出してくれる子もいれば、なかなか自力では歩くことができずに長い経過をとる子もいます。この子もレーザーやジャグジーバスによるリハビリ、さらには自宅でのリハビリを重ねたことで、だいぶ自力で歩くことができるようになりました。すぐに結果が判る手術もあれば、このようにある程度の経過の後結果が判る手術もあります。どんな手術でも全てが良い結果をもたらすとは限りませんが、脊椎の手術は歩けるようになることで手術したことが良かったと思える手術です。?n けれどもこの結果をもたらしたのは手術したということだけではなく、飼い主さんのリハビリに費やした日々の努力の賜物だということを忘れてはなりませんね。