犬でも猫でもそうなのですがその種類に特に見られやすい病気というものがあります。ゴールデンならば股関節形成不全だったり、ヨーキーならば大腿骨頭壊死症だったり、アメリカンショートヘアーだったら伝染性腹膜炎だったりと何かしらの病気になりやすい体質をもっているようです。もちろん必ずこれらの病気が見られるわけではありませんが、飼い主の皆さんが知らないことは多いようです。
本屋さんに並ぶ“〜の飼い方・育て方”で病気のことに触れているものもありますが、ほとんどのものでは種別による病気のことは書かれていないためペットとして家に迎え、病院に掛かりはじめて病気のことを知らされた方も多いかと思います。病気はもちろん避けて通りたいことですが、“その種類はここに気をつけた方が良い”という情報はもっとあった方がいいのではないかと思いますが皆さんはいかがですか?
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点滴のこと
飼い主さんからすると“点滴をうつと元気になる。”ような気がしますよね。もちろん熱があるときに点滴をうってあげると、熱冷ましのような作用をしてくれるので元気になることもあります。けれども点滴というのは口から食べ物も水も受け付けない場合や、心臓病の治療で強心剤の投与をするためだったり、交通事故による事故後のショック状態を緩和できるようにおこなうもので、すべての症例に行うものではありません。
実際に点滴に含まれている栄養分はホントにわずかなものであって、口から吸収する栄養分にはとうていおよびません。食べているにもかかわらず“点滴をしてほしい”という患者さんがいましたがやはり点滴に対しての誤解があったみたいです。点滴はあくまで点滴!日頃の食事には絶対かないません。点滴をうたなければいけないような病気にならないよう健康管理には気をつけましょうね。
気管虚脱
少々わかりにくいかもしれませんが、これが“気管虚脱”を起こしている犬のレントゲン写真です(つぶれてしまった気管を矢印で示しています)。さてどんな病気かというとつぶれてしまった気管のせいで“ガチョウのような鳴き声をしながら咳き込む”のが初期の症状で、病気がさらに進行してしまった場合は呼吸困難を起こして倒れてしまうこともあります。
けれどもこの病気は内科療法(飲み薬)によって症状の緩和あるいはコントロールすることができます。短頭種の小型犬では生まれつき気管が弱い子が多いので、もしかしたらこのような症状が見られるかもしれませんが、相当重症な気管虚脱でもない限り命に関わることはないのであせらずおかかりの病院に相談してみてくださいね。
治療のタイミング
先週の土曜日手術をした犬が今朝退院しました。結構大きくお腹を開いたにもかかわらず、およそ1週間でもと通りに元気な姿を飼い主さんと自分に見せてくれました。“あのまま内科治療で様子を見ていたらまだ退院できなかったかもしれない”と思ったとき、治療のタイミング(見極め)は大切だなと痛感しました。
基本的には獣医医療は“後手の治療”です。病院に入院したときからの治療は“ゼロ”からのスタートではなく“マイナス”からのスタートであることがほとんどです。獣医さんからの治療法の提案は一番良いであろうというものを提示していると思います。もちろんそれを選ぶか選ばないかは飼い主さんです。治療のタイミングを逃さないように獣医さんと相談しながら治療を進めていきましょう!
薬の飲ませ方
病院で薬を処方してもらうときに、“1日~回飲ませてください。”と言われると思うのですが皆さんはちゃんと守っていますか?薬の種類によっては効果が出なかったり出過ぎてしまったりと、様々な問題が生じてくることがあります。これはそれぞれの薬に有効な効果時間(あるいは半減期)というものがありその時間の関係によって1日に飲ませる回数が変わってくるのです。また、飲み薬は注射と比べると効き始めるまでに時間もかかります。これは食べ物と一緒に消化の過程で体の中に吸収されながら効き始めるからです。薬が効いてこないからと言って30分もしないうちにまた飲ませるようなことはしないでくださいね!
ダックスはご注意!
このレントゲン写真は“変形性脊椎症”という病気のものです。(矢印の部位が変形を起こし始めているところです)基本的には年をとってから(だいたい7歳過ぎ位)見られるものなのですが5歳くらいでレントゲンを撮ったら偶然にわかってしまう場合もあります。どんな犬種にも見られるものなのですが、最近人気のあるミニチュアダックス(特に太っている)には比較的よく見られる病気なのです。このレントゲンは非常に重度な症例のものなのですが、症状は歩けなくなってしまったり自分で排泄行為ができなくなったりと本人にとっても飼い主にとっても辛いものです。若いうちから太らせてしまうことは内臓にも負担をかけますが足腰にも大きなダメージを与えてしまいます。ダックスをお飼いになっている飼い主の皆さん、太りすぎにはくれぐれもご注意を!
免疫のこと
よく免疫力といいますが、“免疫”ってなにを意味しているかご存じでしょうか?簡単にいうと“病気にかからないこと”なのですが、病気にかからないためには免疫をつけなければなりません。犬猫は免疫をつけるためにワクチンが必要になってくるのですが、1度もワクチンを打たなくても元気に生活してしまう場合もあります。特に雑種の子は不思議と強い免疫力を持ち合わせているのか、伝染病になったという症例に出会ったことがありません。
今までワクチンを打つ時期と回数のことを質問されるのですが、まず時期ですがお母さんからもらった免疫(母子免疫)がなくなりかける生後60日前後が良いのではないでしょうか。最近では安全に打てるワクチンが出てきたので生後45日位に打つ場合もありますが、当院では生後60日位をお勧めしています。次に回数ですが各メーカーまちまちなのですが、生後60日位に1回目、そしてその1ヶ月後に2回目、合計2回で充分な免疫力は付くようです。もちろんおかかりになっている先生の使われているワクチンの種類によっては多少の違いがあると思いますので、何回打ったらよいのか先生に質問してみるといいですよ!
粉砕骨折!
19日の夜に行った手術は“粉砕骨折”を起こした猫の大腿骨(太股の骨)を治すものでした。やはり交通事故が原因らしいのですが、骨折の破片が全部で6つ(そのうち4つが小さいもの)になっており、どの方法で行うか考えていたのですが“インターロッキングネイル法”というもので行うことにしました。簡単な骨折ならば髄内ピン(骨のなかに金属棒を入れる方法)、あるいは骨プレート(金属の板で骨折部位をネジ留めする方法)のいずれかで行うのですが、まるでパズルのような骨折はこの方法しかないと判断しました。
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小さな穴
18日は食欲不振で元気がない犬の手術をしていました。手術前には様々な検査を行ったのですが原因がはっきりしないため、飼い主さんと相談の上“試験開腹”という形で手術に踏み切りました。超音波検査では“胆嚢炎があるかな?”と思っていたのですが実際に見てみるとそれほどはひどくありませんでした。何かほかの原因があるのではとほかの臓器を探ってみると、子宮に“小さな穴”がありそこから子宮内の分泌物がお腹のなかに漏れて腹膜炎を起こし始めていたのでした。卵巣と子宮を切除してお腹のなかをよく洗浄して手術は無事終えることができました。
腹膜炎なら血液検査やレントゲン検査、子宮内膜症も超音波検査で事前にわかるものなのですが、今回は変化が見られず開腹してはじめてわかった症例でした。様々な検査は私たちにたくさんのデーターを与えてくれますが、実際眼で見るものにはかなわないものだということを実感した症例でした。
今日も・・・
これから骨折の手術のため、Entryはお休みさせて頂きます。