このウイルスは犬においても猫においても病原性を示すのですが、猫が感染してしまった場合は非常に厄介なウイルスです。猫を飼われている方なら1度は聞いたことがあると思うのですが、猫伝染性腹膜炎(FIP)というもので、発症してしまうと非常に死亡率が高いウイルス病の1つです。感染した場合の症状は様々なのですが特に目立つのが“腹水”です。太っているわけでもないのにお腹がぱんぱんになってしまい動くことすら辛い状態になってしまいます。
このFIPは予防ワクチンもまだ確立されていないので、いかに感染させないかが大切になります。感染は唾液や鼻水・糞便や尿を介して起きますので、多頭飼いの方で疑わしいと思われる子がいたならば速やかに診察を受けることをお勧めします。早期発見は感染蔓延を防止できる一番の方法ですから!
診療費の決め方
人と違い医療費や保険制度が確立していない獣医医療では、明確な診療費というものが定められていません。そんなわけで開業するときは近所の動物病院に電話をかけて市場調査をした後、自分の病院の診療費やワクチンなどの価格設定を行うわけなのです。ワクチンなどはメーカー側から“だいたいこのくらいの値段で”という提示価格があるのでそんなにばらつきは起きないのですが、診療費や処置料そして手術の値段はどうしてもばらつきがでてしまいます。
かといって量販の電気店のように極端に安いの値段で診療を行うことは、近所の病院にも迷惑をかけることになりひいては自分の首を絞めるような結果を招いてしまうことにもなりうるのです。患者さんにとって診療費が少しでも安くなることはうれしいことだと思いますし、それは私たちもわかっています。けれども規模の大きな病院は別として、診療費は病院同士微妙なバランスを持って決めていますのでご了承ください。
検査値のあれこれ
以前のEntryでも同じようなことを書いたと思いますが、同じデーターでも読み方が違えば病気も違います。血液の検査は年齢によっても食前と食後によっても数値は変わってきます。肝臓の機能を見るためのALKPというものも成長期の動物では高い値を示しますし、腎臓の機能を見るためのBUNというものも血糖値を見るGLUというものも食後では高い値を示すことがあります。日常生活の様子や身体の状況を見ないで血液検査の結果だけを読んでしまうと、病気でない子も病気にしてしまう可能性があります。
同じ病気でも年齢によって症状のでかたは異なります。患者さんの年齢や全身状態によって検査法や治療法も選択できるような広い視野をもって診療したいものですね!
膝の靱帯
人間と同じで犬猫の関節には“靱帯”と呼ばれる組織があり、関節を適度に安定させ動きをサポートしています。捻挫は靱帯が過度に伸ばしてしまったことで、関節の安定化を失いそこに炎症をともなって腫れたり痛みを起こしたりします。靱帯を伸ばしたくらいならばまだ良いのですが、太りすぎたり、老化によってもろくなったりすることで靱帯が切れてしまうことがあります。切れてしまった靱帯は縫い合わせたり、切れてしまった靱帯の代わりをする靱帯を再建する手術をしなければならないことがあります。
これから靱帯再建の手術を行いに友人の病院まで出かけてきます。どうやら前十字靱帯が切れてしまっているとのことでした。結構太っている犬とのことなので、手術よりも術後の管理をがんばってもらわなければいけなそうです。やはり太りすぎは良いことがありませんね!
申し訳ありません
本日は午後より大学の研究室の同期との集まりがあるため、私の診療は午前のみとさせていただきます。なお24日の診療は手術依頼のため夕方5時までとさせていただきます。このEntryをご覧頂いた当院の患者さん、ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
先入観という落とし穴
飼い主さんからの稟告からスタートする犬猫の診療は、正直獣医さん(自分も含め)に対して様々な先入観を持たせます。もちろん稟告だけで診察を終了することはないので、病気を見落としたりすることのないよう身体検査から始まり、必要があればさらに進んだ検査を行います。けれども獣医とはいえ人間、いくら修行を積んできたとはいえ少なからず先入観をもってしまうとそこから視点が離れなくなってしまうこともあります。
セカンドオピニオンといって、違った先生によって新たな病気の見方や考え方を得ることができます。自分は少しでも不安に思ったことはすぐに調べなおし、信頼のできる先生に相談するようにしています。そうすることで新たな治療方針を導き出し“落とし穴”にはまることなく診療を進めることができるからです。このインターネット時代、情報は満ちあふれています。先生には聞き難いけれど不安に思ったことはどんどん検索して調べてみることは大切ですよ!
離断性骨軟骨症
股関節形成不全と一緒に大型犬種(特にオス)に見られる骨の病気として“離断性骨軟骨症”というものがあります。特に肩関節の軟骨部分に見られることが多く、飼い主さんはペットが跛行(足を引きずって歩くこと)することで発見するケースがほとんどかと思います。Entryしているレントゲン写真もジャーマン・シェパードの肩関節にみられた“離断性骨軟骨症”のものです。症状としては特に坂道を下る運動を非常に嫌がりました。“離断性骨軟骨症”は成長期における軟骨が骨化するときの速度の差によって骨と軟骨の分離が生じることで起こるのですが、骨が成長しているときの極端に激しい運動が原因になることもあります。
レトリーバーを飼われている方で股関節形成不全の診断してもらうときには、肩関節も一緒にレントゲンを撮ってもらうことをお勧めします。病気の兆候を早くから知っておくことは大切ですよ!
さらに充実!!
久しぶりに永岡犬猫病院勤務時の同期と会うために、みなとよこはま動物病院(旧・永岡犬猫病院)に行って来ました。雨にもかかわらず診察を待つ患者さんがたくさんいました。おどろいたのは地下1階部分に飼い主さんが自分のペットと寝泊まりができるICU(集中治療室)が新設されていたこと。そして病気に対しての説明をコンピューターのスクリーンで解りやすく説明するシステムが導入されていたことでした。
飼い主さんにとって病気に対しての説明はなかなかわかりにくいものです。それを解りやすくさらには安心して入院生活を見守れるような設備の充実は、みなとよこはま動物病院がほかの病院の追従できないようなレベルにきていると思いました。近所にお住まいの方は是非足を運んでみてはいかがでしょう。動物病院の見方が変わるかもしれませんよ!
止めるべき咳
咳はするのも辛いですが、しているのを見るのも辛いものです。できることなら早く止めたいものです。けれども咳というのは気道内に付着した異物を排除するための生体防御反応の1つだという事を皆さんはご存じですか?よく痰がからんだ咳といわれるもので、異物を痰のなかに包み込んで排除するといったものなのですが、このタイプの咳(湿性の咳)はよほど体力の消耗がない限り止める必要はありません。これとは別に乾いた咳は体力を消耗するのはもちろんのこと、気管や肺に強い圧力がかかることで2次的な病気が引き起こされる可能性があるため積極的に止めなければなりません。
これから寒くなり人ではインフルエンザが流行り始めます。咳をするにはそれなりの原因があり、その原因がはっきりしなければ咳を止めるべきか否かの判断はできません。咳をしているから咳止め薬をもらうといった習慣は身につけたくないものです。ちゃんとおかかりの獣医さんに相談してみてくださいね!
日付けは変わりましたが。
16日、チワワの4つ子が生まれました。レントゲンでは何とか自然分娩でいけそうだったのですが、陣痛が弱くやむなく帝王切開にて無事出産しました。3?の小さな体に4匹の新しい命、大したものですよね!飼い主さんも新しい家族を迎えて大変喜んでいました。しばらくの間赤ちゃんの世話は大変ですが、がんばってくださいね!