私は高校を卒業して、1年間予備校に通わせてもらい何とか藤沢にある日本大学の獣医学科に入学することができました。6年間不自由な思いをすることなく過ごし、無事に獣医師免許を取ることができたのも当病院の院長である父のおかげです。大学卒業後、獣医師として自分に大きな影響を与えてくれたのは永岡犬猫病院院長(現・みなとよこはま動物病院)である永岡勝好先生でした。
動物病院といったら自分の家の病院しか知らなかったのですが、永岡犬猫病院に大学在学中に実習に行ったとき“ほんとにここが動物の病院?”が正直な感想でした。とりわけ目を引いたのが手術室の大きさでした。病院の施設もさることながら、院長の動物を救うことに対しての情熱、新しい手技の開発、獣医師としての姿勢、全てにおいて尊敬でき“ここで修行しなければ”と、ほんの数時間で決心しました。
今でもたまに院長の手術を見学させてもらいに横浜に足を運ぶのですが、バリバリ手術をこなしている姿を見ると“この人にはとてもかなわないな”と思う反面“少しでも近づけるよう努力しなければ”と思う今日この頃です。
手術前には・・・
昨日はちょっと設備の話になったので、今日は術前検査のことを書いてみたいと思います。術前検査というのは読んで字のごとくなのですが、手術前に行う体内臓器の検査のことです。当院では手術前には左図のような紙面にて検査結果をご説明させていただいています。
以前に“犬猫の1日”の項目で書いているのですが、犬で10歳といったら人の56歳に相当します。例えば人がこの年齢で手術を受けなくてはならないとき、病院では術前検査として血液検査はもちろん心臓の検査などを行ってから手術に挑むことと思います。人医療では当たり前のように行われていることなのですが動物医療ではどうでしょう。
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家業を継ぐのも
大学に通っているときの話なのですが、同級生に“お前は実家が動物病院だから卒業してもいいよな!”といわれたものです。自分も在学中はそう思っていたのですが、現実はそうでもないんですよ!父との年齢は30以上違います。もちろん大学でうけてきた内容も違い、卒業後うけた臨床獣医師としての教育も違います。診断に対しての考え方・治療の進め方、一致するもののほうが少なく、かえって自分で思ったように病院をやっていた方がストレスは少ないと思います(開業するための資金的ストレスは大きいと思うが)。
homepageに掲載している病院内の設備もここ2年間でそろえたものがほとんどです(結構大変でした)。昔は診療所的な病院で血液検査なんてものはありませんでした。“設備なんてなくても”まあそれでもやっていけた時代ですから良かったのですが、ペットブームとともに病院のあり方も変わってきたのではないかと思います。“治ればいい”だけではなくしっかり診断をつけ治療していくことが大切だとは思いませんか。
今までの病院の流れを壊さずに新しい方向に向かっていく!なかなか大変です。
いい病院って?
皆さんにとってどんな病院ですか?僕は大学を卒業してから横浜の病院に勤務していたのですが、地元の栃木に戻ってからいい病院のあり方というものが解らなくなったことがあります。横浜ではスタッフも多く検査機器もそろっていたのでほとんどのことが診断可能でした。もちろん費用もそれなりにかかりはしましたがほとんどの患者さんは満足されていました。
飼い主さんにとっては“よく見てくれるとこと。 ”そして“早く治るところ。”なおかつ “治療費も安いところ。”ですよね。なかでも飼い主さんにとっては一番最後の条件が大きいですよね。もちろん動物医療にはまだ保険制度が確立していないので料金というのは大きな問題ですよね。けれども新規で開業した獣医さんやどんどん新しい検査機器を取り入れている獣医さんは、それなりに大きな借金を抱えながらも少しでも命を救うのに役立てばという思いのもとに設備投資をしていると思います。病院選びの基準って値段だけではないと思うのですが皆さんはどう思われますか。
暇な一日
入院していた前庭疾患のワンちゃんが退院し、お盆中お預かりしていたマルチーズがお迎えにいらっしゃって、午後からはしとしとと雨降り。さすがにこの雨の中ではペットを連れてくる方は少なく、“お薬だけください。”という方がほとんどでした。
勤務医をしていた頃は少々暇だとホッとしていたのですが、病院の経営に携わってくるとまずいなと思ってしまいます。病気が少ないと言うことは獣医師としては(飼い主さんとしても)喜ばしいことなのですが、病院経営ということになると喜んではいられません。少々時間があった方が患者さん一人一人ゆっくり診察できますが、忙しくないと少々不安になる。なかなか獣医師として葛藤があるのですが、これからも総合的な診察・治療ができる病院にできるように“暇な一日”は勉強しなければいけませんね。
獣医さんになるにはVol.3
“獣医学科が6年もあると専門的な勉強ができ、卒業して獣医さんとしてみなさんにお目にかかるときには腕利きになっているのだろう”と思われている方も多いのではないかと思いますが、動物病院の先生になるには医学生と一緒で我々もどこかの病院でインターンをしていないととても使い物にはなりません。また大学で勉強するのは基礎中の基礎で、国家試験をパスするためのものです。ここで誤解があってはいけないのですが、獣医学科の学生みんなが犬猫の先生になるわけではなく国家公務員や成田空港の税関、JRA、農協など進む道がたくさんあるのです。
自分は入学時から動物病院を継ぐことを目標としていたので、将来役立ちそうな外科学研究室に所属したのですが、手術時の消毒の作法やマナーなど今でも役立っていることが多いです。今おかかりの先生に所属していた研究室のことを聞いてみると、その病院の得意とする分野や特徴が何となくがわかるかもしれませんよ。
獣医さんになるにはVol.2
大学の入学試験に晴れて合格すると楽しいキャンパスライフが待っているのですが、入学して3ヶ月位でイメージが違ったなどの理由で退学してしまった人もいました。イメージといったものが個人でそれぞれ違うとは思いますが、自分がやめてしまった人の理由として感じたのは実験動物のことだと思います。実習によっては最終的に使用させてもらった動物を殺処分する事があります。“命を救うために獣医学科に入学してきたのに‥”感極まって泣いてしまう人も居たくらいです。最近では動物愛護の関係で実験動物の使用が制限されてきているのですが、自分は外科の研究室にいたので普通の人から比べると実験動物を最終的に処分する場に多くいたと思いますが、やはりかわいがっていた犬を処分しなければならないときは非常に辛かった思い出があります。
“卒業してから多くの動物を救うため”なんて言うと聞こえがいいかもしれませんが、今の医学にしても獣医学にしても何らかの犠牲があって現在の医療レベルがあることを理解してください。明日につづく‥
獣医さんになるには
“動物のお医者さん”という漫画がありますよね。この漫画の影響で最近の獣医学部は女子の人数が男子の人数を上回っているようです。実際、入試の結果など大学の先生に伺ってみると上位からボーダーラインまでほとんどが女子のようで、男子の結果はなかなか思わしくないようです。自分が入学した年もほぼ男女の割合がおなじくらいでした。
さて獣医さんになりたい学生さん達にお伝えしておきたいのは、まず獣医大学は6年制です。(以外と知らない方が多く、学費も決して安くありませんのでご両親に良くお話ししておいた方がいいですよ)大学によってカリキュラムは違うとは思いますが、1〜2年生までは一般教養がほとんどで、3〜4年生で専門科目の授業が始まります。自分の大学では4年生になるときに研究室に入室し、卒業するまで所属します。5〜6年生で実習を行うといった感じになります。そして6年間の集大成として獣医師国家試験というものがあり、これをパスする事で獣医師としての免許が与えられるんですね。明日につづく‥
狂犬病のこと
狂犬病というと非常に縁遠い病気のように感じますが、実は日本でも流行の兆しがある病気なんですよ。最近、犬猫以外のエキゾチックペットといわれるものが狂犬病ウイルスを運び込んでいる可能性があるというニュースをご覧になった方もいらっしゃると思います。新聞でも日本に入港するロシア船が守り神としている犬が検疫を受けずに上陸しているとのことで検疫に力を入れているとの記事も掲載されていました。
実際、日本では1957年以降発生していないのですが国内での狂犬病予防ワクチンの接種率は50%にも満たないのが現状のようで、万が一流行するようなことがあったらお手上げです。狂犬病のように予防第一の病気はしっかりワクチン接種をうけなくてはいけませんね。
ちなみに狂犬病に感染した際の症状は、恐水症状・呼吸障害といったもので、発症した際の治療法はなく数日で死亡してしまう怖い病気です。
ワクチン接種のこと
昨日パグの赤ちゃんが生まれたということで、今日はワクチンのことをお話ししたいと思います。このhome pageをご覧になっている方はワクチン接種のほうはお済みかと思いますが、以外とワクチンのことをご存じない方もいらっしゃるようです。というのもワクチンというと狂犬病を予防するものもあれば、犬猫それぞれの伝染病を予防するものもあり飼い主さんもどれを接種すればいいのかわかりませんよね。
犬では狂犬病予防ワクチンと犬伝染病予防ワクチンがあり、猫では猫伝染病ワクチンがあります。狂犬病予防ワクチンは犬を飼っている場合接種することが義務となっていますが、犬猫それぞれの伝染病予防ワクチンに関しては飼い主さんの任意接種となっています。
ワクチンを接種しているという効果は目に見えてわかるものではありませんが、お互い動物を飼っているもの同士、病気をうつしあわないための1つのルールとして心懸けたいものですよね。